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どるとるの部屋


[8091] 夜明け前
詩人:どるとる [投票][編集]


高架下の壁に描かれた落書きが
いつになく 輝いて見えた日に
僕も迷っているのだと気づいて
少しだけ 立ち止まって悩んだりした

奥歯で噛み砕いた常備薬
水で飲み下して窓の向こうに 沈む夕日を見た

街は 今静かにその口を閉ざしたまま
今日の悲しみを 喜びをいくつも抱きしめて
あなたはあなたの今日を生きていて
僕は僕の今を生きて

たまに泣いたり笑ったりしながら
夜明けを待ちくたびれて眠れずに
猫を抱きしめて 君を思い出しているよ

ひんやりとした空気が包む朝
朝刊がポストに投げ入れられた
遠くの国の戦争や名前も知らない人の死に何を思うだろう

計算ばかりしてきたからだろうか
計算できないものに出会うと 目を反らす癖ができた

君はどんな夢を見ているのだろうか
そんなイメージを 広げては捨てていく
あなたはあなたのためだけに生きて
僕は僕のためだけに生きて

それが勝手なら何が正しいのだろう
夜明け前のまだ薄暗い街並み
僕は昨日見た夢さえ思い出せないよ

数回のまばたきのあとの 退屈そうな
あなたの横顔を ただ眺めている
そんな時間が 好きだったことも
今では 全部幻になってしまったな
伝えずに とうとう終わった恋の
必要なくなった思いを捨てられないのは
今でもその気持ちが変わらないからだ

街は 今静かにその口を閉ざしたまま
今日の悲しみを 喜びをいくつも抱きしめて
あなたはあなたの今日を生きていて
僕は僕の今を生きて

たまに泣いたり笑ったりしながら
夜明けを待ちくたびれて眠れずに
猫を抱きしめて 君を思い出しているよ。

2016/07/25 (Mon)

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