詩人:灰色 | [投票][編集] |
逃げるように、町の喫茶店
チェーン店
誰も他人を気にしない、一人ぼっちばかりの店
たいして美味しくはない珈琲
やめられない煙草
呼吸を忘れるたびに火をつける
イヤホン
音楽で世界を閉ざす
目を瞑って
忘れられない何か、忘れてしまいたい些細な何かが頭の中で反響する
息ができない
眠い
こわい
「落ち着きなよ、大丈夫」
小声で言い聞かす。
誰も私を見ていない、誰も私のことを知らない小さなチェーンのコーヒーショップで涙をこらえて、息をして、
そうやって、削れた心の削りかすを拾い集めて生きている。
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「いいやつだね」
って言われたいわけじゃない。
「いい子だね」
って頭を撫でてほしい。
「やさしい」とか「いい子」とか、
それだけで許されていたあの頃が恋しい。
かつて生きていた穏やかで優しかったあの日々への憧れを私はまだ捨てられずにいる。
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明日が怖くて眠れないから
誰か私をいい子と褒めて、おやすみと撫でて。
不安と浅い呼吸を忘れて微睡みに沈みたいの。
嘘でもいいから
明けない夜を約束して。
恐ろしい明日は来ないとそう言って。
目が覚めてもまだ朝が来ないことを願ってる。
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別に不幸自慢がしたいわけじゃないのに、
口を開けば、溢れだした不満の欠片で誰かを不快にさせてしまうのではないかと恐ろしくなる。
だが口をつぐんでしまえば、つもりつもった苛立ちや、理不尽や、傷ついて剥離した心がぽろぽろと身体中を満たして、息ができなくなる。
浅い呼吸は喉の奥で詰まり、
役に立たない脳は息の吸い方を、
酸素の取り込み方を、
忘れてしまう。
息ができない。
鼓動がうるさい。
でも、そんなのは誰にも関係がないし、声高に主張したいわけでもない。
だけど助けてほしい。
心の内でこっそりとつぶやく。
でも、誰に?
もっと大変な人なんてそこらじゅうにいるのに?
誰もがいっぱいいっぱいの中、生きているのに?
口をつぐんで、目をつむって、
時折溢れ出してしまう不幸の欠片を慌てて拾い集めて胸に抱いて、蹲って、笑顔で。
……助けてほしい。
誰か薄っぺらで無責任な優しさで、
根拠もなく大丈夫だと言ってほしい。
それを責めたりなどしないからどうか、大丈夫だと断言して。
私は悪くないのだと、どうか。
「おまえはいい子だ」
と、どうか幼いあの日のように、
いい子だというだけで、どうか私を認めてほしい。
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しんどいむりつらいくるしい
いい加減絶対評価で苦しんでもいいですか。
いつまでも「あの子よりは恵まれてるから」と
相対評価で泣くのを我慢しなくてもいいですか。
「つらい」って私の感情でもいいですか。
逃げても、泣いても、吐き出しても。
だれか許してと今日も声に出さずに逃げている、ずるいずるい私。
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今日が来てしまったと、毎朝嘆くくらいなら
どこかへ逃げ出してしまえばいいのに
自分のための良心がそれを阻んで、
私は私のせいで今日も朝が来てしまったと泣くのだ。
馬鹿馬鹿しくて、情けなくて、やるせなくて苦痛だ。
どこか遠くへ。
誰も私を知らない場所へ。
風が連れ去ってくれると言うならば
今持つ全てを差し出したっていい。
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まさか。
まさか帰ってくるなんて思わなかった。
だけど、IDもパスワードも、覚えてた。
そうかぁ、また、傷ついてたんだなぁ。
また、すがりにきてしまった。
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やさしくすることはできる。
やさしいふりをすることだってできる。
何でもないような顔をして笑うことももはや容易い。
でもやさしい人にはなれなかった。
ごめんね。
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たぶん怖いんだ。
だから諦めようとする。
物分りのいい言葉を繰り返して。
だけど諦められるほど本当は、強いわけでもない。
意地を張ることだけは一丁前。
格好つけることも忘れない。
でも本当に何も気にしていないわけじゃない。
憐れまれたくないし、でも埋没したいわけでもない。
怖くて怖くて仕方がないのに、ちゃちな自尊心は燻る想いを見ないふり平気なふり。
やさしくなりたい。
だけどしあわせにだってなりたいんだ。
いっそのこと全ての関わりを捨ててしまいたい。
それでも臆病な自分はそれを嫌がる。
じゃあどうしたらいい?
わからないよ、わからないからどうしようもないんじゃないか。
そうだねって笑ってみる。
怖くて分からなくて不安だから笑い顔だけはシニカルなまま。
独り芝居も独り相撲も独り善がりもお手のものさ。
怖いんだ、たぶん、この世界が。