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ひトもの部屋


[123] におい
詩人:ひトも [投票][編集]

その不可逆さはずるいと思う。

底に沈めた錆びた錨も、
底に沈んだ宝の箱も、

手が届かないと諦めたのに、
そのにおいがした途端、
泡みたいに浮かび上がって、
否が応でも思い出す。

水面で儚くそれは割れ、
再び沈んでゆく様を、
なすすべも無く眺めて終わる。

その一方的な不可逆性は,
どこかそうだ。夢にも似てる。


その不可逆さはずるいと思う。

底に沈めた錆びた錨も、
底に沈んだ宝の箱も、

息が続かず届かぬ日々も、
そのにおいがした途端、
足掻く私をからかうように、
否が応でも思い出す。

水面でゆっくりそれは割れ、
どこかに霞んでゆく様に、
手を伸ばしては届かず終わる。

その一方的な不可逆性は,
どこか、そうだ。あなたに似てる。

2018/10/01 (Mon)

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