詩人:はちざえもん | [投票][得票][編集] |
東京の空は狭い、と言う。
或いは四角だ、なんて事も聞く。
実際に見上げてみると、なるほど、言われてみればそんな気もするが、
ことさらに強調する程のものではないようにも思われる。
きっと、その言葉、それ自体が
寂しさや孤独感の比喩表現、みたいなものなのだ。
ただそんな詩的な感傷に浸りたいだけなのだ。
五月、晴れ、少し暑い。でもジャケットは脱がない。
休日、午後、少し過ぎ。休日のありがたみが身に沁みる。
久々に会う君に
なにを話そうか、さっきまでそんな思いばかりが渦巻いて
それが馬鹿に照れ臭く、だったらいっそ何も考えずに臨んでやれ、と
誰かにいい訳でもするように
君の到着を待ちわびる。
そう、待ちわびている。
気にしないようにと意識するほど、
僕は目の端でもって
目の前で行きかう人々の群れの中に
君の面影を探している。
故郷を離れるという事、それは僕自身が取捨選択した人生で、
寂しさをまるで感じない、と言えば嘘になる。
でもさ、今は毎日に必死で挑んでる。
感傷に浸る時間はそれほどない。
君と何を話そう?話したい事がたくさんあって、でも何を話せば良いのかわからない。
手を振る君の姿が大きくなってきた。
僕も思わず手を掲げ、でもそれが恥ずかしくてすぐ頭を掻いた。
時間は人を変える、なんてよく言われるけれど、
僕はその言葉も信じない。
根拠なんてない。
探せばあるかもしれないが、
今はどうでもいい。
「東京の空は狭いって言うけどさ…」
見上げればその殆どが空で、その他 鳥が少し飛んでいた。