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[143764] 東京

詩人:はちざえもん

東京の空は狭い、と言う。
或いは四角だ、なんて事も聞く。

実際に見上げてみると、なるほど、言われてみればそんな気もするが、
ことさらに強調する程のものではないようにも思われる。


きっと、その言葉、それ自体が
寂しさや孤独感の比喩表現、みたいなものなのだ。
ただそんな詩的な感傷に浸りたいだけなのだ。

五月、晴れ、少し暑い。でもジャケットは脱がない。
休日、午後、少し過ぎ。休日のありがたみが身に沁みる。


久々に会う君に
なにを話そうか、さっきまでそんな思いばかりが渦巻いて
それが馬鹿に照れ臭く、だったらいっそ何も考えずに臨んでやれ、と
誰かにいい訳でもするように
君の到着を待ちわびる。

そう、待ちわびている。
気にしないようにと意識するほど、
僕は目の端でもって
目の前で行きかう人々の群れの中に
君の面影を探している。

故郷を離れるという事、それは僕自身が取捨選択した人生で、
寂しさをまるで感じない、と言えば嘘になる。
でもさ、今は毎日に必死で挑んでる。
感傷に浸る時間はそれほどない。

君と何を話そう?話したい事がたくさんあって、でも何を話せば良いのかわからない。


手を振る君の姿が大きくなってきた。
僕も思わず手を掲げ、でもそれが恥ずかしくてすぐ頭を掻いた。
時間は人を変える、なんてよく言われるけれど、
僕はその言葉も信じない。

根拠なんてない。
探せばあるかもしれないが、
今はどうでもいい。


「東京の空は狭いって言うけどさ…」


見上げればその殆どが空で、その他 鳥が少し飛んでいた。

2009/05/18 (Mon)
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