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halcyonの部屋


[294] 生きていける
詩人:halcyon [投票][編集]


知らない振りが彼の癖。
それがいいところでもあり悪いところでもある。


けれど、
その行動には
愛がこもっている事を
わたしは知ってる。
知っているのだ。





「おまえ、その、いつ…」

「いつ…なんです?」

「いや、やっぱりなんでもない。忘れてくれ」

「そうですね。2、3年前くらいですかね。別れたのは」

「…そうか」

「はい。別れたっていっても随分一方的でしたけど。あの人、死んじゃったんで」


私は彼の為に出来るだけ
なんでもない事のような
声を出した。


「…そうか」


俯いた彼が繰り返し呟いた一言に膝を抱えていた
手が震えた。


「そうですよ。
だから、わたしはいまひとり、です。」


ひとり、口に出したのはあまりにも久しぶりな言葉だったから、ああ、私はいままでこの言葉を無意識に避けていたんだなと思った。頬をつめたいなにかが伝った。彼はいつの間にか俯いていた顔を上げ、私を見ていた。


「おまえの傍には、いま、おれがいる」
「だから、ひとりではないだろ」
「なあ」


まっすぐ私を見てそう言った彼に、私は自分に出来るだけの笑顔を向けた。
そして涙をぐっと堪えて目を閉じた。






私はこれからの人生を彼に託そうとおもう。
いいかな?
私は、今を生きていく。
ごめんね。
愛してたよ。

2009/04/27 (Mon)

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