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タンバリンの部屋  〜 新着順表示 〜


[56] 乾くな、乾くな。
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車椅子の車輪。夢の中でまわり続けた。



何も知らなかった頃、無駄に大きく見えた。




イタチ好き、昔からで。


二匹じゃれあうの眺める。



砂漠地帯の広がりはいつも、速達郵便の山。



孤独のインフレが起きたせいで、方位を忘れて吹き荒れて。



出会いを砂に詰めた風は今、人の命を削るのが仕事だって言う。




ガラスで出来た飛行船はもう、ずっと昔から炎上してて



彫り込まれた細工が溶け出して、絵本の世界が膨張して。


昨日の夕焼けに映ったよ。今朝の朝焼けに滲んだんだ。



まるで潰れた廃屋みたいだよこの景色。こんな事柄の、潰れたカタマリ。




奇跡の瞬間があるとするなら、


それはきっと、ペンギンスライディングを決めた時の、



小便にいさんの飛び散る純粋。


感情はいつも


感情はいつも、



海の塩よりもからく、喉を焼いて通り抜けるんだ。


乾くな、笑ってくれ。



乾くな。



きっとすぐに、滲み出すんだ。



山吹色の感情が


川べりの水を眺める時の感覚になって


胸の中に染みるから。



出来事をみんな、平等に、


塗りつぶしてくれるんだ。



2008/04/26 (Sat)

[55] 北パプリカ半島のじいさん
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幸せ過ぎて、飛行機雲が隕石に見えた時。



僕は見とれて、ジュースを地面にこぼしたんだ。





パプリカ半島、目を閉じてそこへ行く。

すぐに着くんだ。疲れているから。



白い風が吹いて、

頬をかすめたら、

何もかもが変わる。



こげ茶色の灯台には、

水色のカモメたちが。



でも、何だろう。赤と緑のカタマリが空をたくさん覆ってる。



僕は立ち止まって、胸に右手をあて、


飛んで来た一粒に手をかざしてみたんだ。


大きさが変るだけで、また空に戻っていく。



灯台に続く道から、


くたびれた背広を着たおじいさん


僕の方に歩いてきた。





「5年ぶりじゃのう、まいったわい。」


「――の大発生じゃよ、この歳になれば感覚で分かる。」



「若者が生み、若者が消す。あんたさっき触れていたんだろう。それも分かる。」




「こういうヤツはなぁ、世界で片付けねばならん。わしもまぁ、よく闘った。」



「世界ったって、そんなこと、きっと誰も彼も。」



「どこまでが世界か?あんたの中が、世界じゃ。あんたの心が、いつも大切な所を占めておる。」




「あんたは精神世界で、何かをこぼしたんじゃろう」




「しかも、一人ぼっちだと思っとる。」




「若者よ、そいつと同じものを、どこかで誰かが抱えておる。」



「一つ一つと苦しみながら、お前との出会いを待っておる。」



聞いておくれ。



―簡単な魔法がある。



―いいかい、そいつは。



「あの時」の気持ちでいる事だよ。



「忘れた」って、


何にも偉くないだろう。




2008/01/02 (Wed)

[54] グレープのサンドウィッチ
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良い果物がある時は皆ジンで割ってしまうんだ



もの珍しそうに何も知らない君と


時々いたずらをして暮らしたい



言葉を空気の瓶に居れて



巨峰の実の色したビル風の中で




こっそり涙を流してる


もうみんな眠る前さ


あんなに機嫌悪そうに



ニュースペーパーは紫


舞い上がった緑の魔法ビン



言葉を空気の瓶に居れて



抱き合っていたい。君と。




2007/12/10 (Mon)

[53] ミキサーの必要
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皮を剥かれた綺麗なリンゴを


何色だって言ってもいいんだよ


そしたら君はリンゴに色を名付けた事になるし


もしかしたら喜んで、その色に変わるかも。



でも、その前に僕は簡単に呼び捨てていたんだ。



リンゴの皮は茶色。


すぐに腐るから、必要ないんだよね



価値観に沿った諭ししか受け入れないのなら



僕とリンゴの皮は無関係なのかな。



2007/10/14 (Sun)

[52] テディ
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「空って海より狭いと思うの。


ワインをひとくち飲めば分かる事だわ。」



 目線を合わせて



犬と仲良しの頃。



サワークリームほっぺたに付けて、彼女はかしこそう。


「カーペットは散らかってるのに、みんな靴をそろえるのに夢中。



それに気付いてるの私だけ、トーストが上手なあなたにだけ教えるの。」




サワークリームほっぺたに付けて、彼女は無垢。



あの犬が部屋の隅っこ。



人はみんな舌を出してる。




僕がカナヘビにさよならと泣いた。



誰かすぐそれ、踏んづけた。




「ポテト取ってよ、サワークリームの中だわ、きっと。」


2007/05/07 (Mon)

[51] ジン・ライム
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夕焼け色の飛行機雲がしあわせすぎて隕石に見えた時があって、


僕は見とれてお小遣いで買ったオレンジジュースをこぼしたんだ。


本当に昨日の出来事みたいだよ回ってて。回ってるからフィルムは照らされてて。だから綺麗。


泣きたかったんだ、雨の日以外は。

別に抱きとめてほしいわけじゃないんだな。


でもサバンナが好き、動物達が走っててそれは一生懸命流れる。水が色んなものにあたって、弾けたりして、光る。

変わらない、何も。がらりと変わり過ぎて、見えなくなるから。


ところでいつも不思議に思うんだけれど


なんでか言葉ってすぐモノに化けてさ、あなたに届く前に姿形を変えるあれは


やっぱり君のかたちになってるのかな。



なってるといいな。


2007/04/23 (Mon)

[50] 旅のかばん
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夢の切り口を見たんです


まぎれもなくそれを


淡い桃の縁取りは


昨夜の夢ではないのです



僕の仕度を邪魔する人が、いなくなりました


邪魔しあっているのが、生きている事でした



この荷造りを終えたら、頭の固い人たちの仲間入りをするというのに



どうして どうして


だれも僕を止めないの



旅のかばんをさかさにしてください



さかさにして欲しいんだ



2007/04/08 (Sun)

[49] コンドルギアの粉塵とケムリの話
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アベルスネイアの世界で、ヤリ投げってた


僕は気ままで、夜は気まぐれ。



要はどう生きるかって事


忘れかけてるのなら、


忘れかけてるんだろう。




錆びちゃイケナイよ、だめなんだ


いちごジャムをかけようよ。



型取るなんて、逆の事柄


よごし切って、窓に目をやる


ぼんやりとしてきた



違ってきたね、どこか今まで。


出掛ける準備、君も気まぐれ。




袋詰めのキャンディが


何度もクルマに轢かれる様に


そこからさきはもう全部、


君の秘密になるんだろう。



2007/02/09 (Fri)

[48] アイスクリームは身勝手
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ドラッグストアで買い物してる


君は「ドラッグストアって響きが好き」と、薬箱みたいなカゴ下げて笑う



棚卸ししてるのは、おじさんみたいに老けた兄ちゃん


ジーンズのほどけた糸に、ズルズルと若さぶら下げてる



アイスクリームの箱ひっくり返して店中、クリームまみれバニラの香り



そうしたいって思うのはお菓子売り場に居るあの子と僕だけみたい


でもそれって、しょうがない事なんだ



どっちの方が身勝手な人間か、なんて



誰に聞く言葉じゃないだろう


2006/11/14 (Tue)

[47] 僕が子供じみている間に
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誰も乗っていない

       桟橋にある







アヒルのボートで二人きり

  バシャバシャと僕らは暮らしてた



「ほとりがあるよ


「ううん、あれも海なの




アヒルのボートは笑ってる

  ポケットの中身、一緒の袋に入れて



「縄、はずしちゃったね


「いいの、二人で安心になるから




水には、しょっぱいのと普通のがあった


僕らはボートの中でそれを知った





さざ波が立つと 僕らは抱き合ってささえた





でも、ある時


抱き合った向こう側


お互いに  ボートの床にヒビを見つけた




アヒルのボートは同じ顔


  二人とも、その事を隠して





アヒルのボートは笑ってる


  無邪気に傷付け合った跡




あいあいがさ お菓子の袋




最初に君だけ残って


      その三日後僕だけ残った




「霧が晴れたらね、後片付けの日がくるの



「私ね、それが怖いの   なにより怖いの




みんな




みんな、




水色ドアに閉まっておかなくちゃ、


      僕が子供じみている間に。





アヒルのボート



バシャバシャと幸せそうに




「行きたい場所なんて、どこにもないんだよ





2006/08/13 (Sun)
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