詩人:タンバリン | [投票][編集] |
もう随分雨は降ってて
商店街 僕は一人歩き
ジーンズの色が、雨色に染まってる
時々、人生に見えるんだ。
庇の下や、丸い葉っぱの木の中で
一休みしたら、また濡れに行く
煙草は恋人、くちづけしなきゃ
すぐに消えちゃう、灰を残して。
緑色の傘は、錆びていたから、バスに乗る時投げ捨てたよ。
バスに乗る時投げ捨てたんだ。
錆びていたから
灰を残して
消えていくんだ
灰を残して
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もう四十回も四日前
南京錠、錆びて茶色のドア
駆け出す様にトビラを閉めた
悲鳴はその度に聴こえた
割れた半月、ガラステーブル
噛じり飽きたレモン捨ててきた
「行かないで、行かないでよ!」って、
お前はすぐ笑い話にするけれど
こんな事まで茶化すなよ
乾いたレモンの散り際の
香りで僕は思い出す
「行かないで、行かないでよ!」って、
二、三個コオリが溶けた時
自分の声だと知ったんだ
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みたらし団子で殴れば
シュークリームが飛んでくる
そんな甘い、季節の奥には
信念があって。
愛とかそういう言葉にならない
信念が、あって。
サバシティカルなカンカクは、
そう、ミルクがコーヒーに溶け込んでいく。
それを見つめていればいい、それだけのカンカク。
無くなってしまった、なんて。
誰が言うのさ
欲しい怒鳴り声
泣いてるじゃねえか
誰が泣かした。
簡単過ぎる事、
それはとってもむずかしいこと。
自分の事、棚に上げるだとか
言ってる事、矛盾してるだとか
そんな会話の通じない場所で、
ヤンキーが叫んだ。
見習えチョイ悪オヤジ
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なんだか通り越してしまったような
後戻る気がして悔しいだけのような
不味い氷を噛みながら
僕は今ジッパーを下ろしている
サバンナはとても、乾いているんだって
なんだっけか。あの月のなまえは
なんだっけか。幼稚園の頃のあだ名
当然不味い、水なのか。
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「ねぇダーリン。人はもう、
人間はもう美しくないんだって。
あの男の人が言ってたの。」
もう、美しい筈がないんだって。
泥まみれの野良猫の方が、どんなにか美しいって。
だから私、ひっぱたいたの。
そしたら涙が出てきたわ。
しょうがないのこんな風に。
生まれて来たの間違ってなんかないわ。
そうでしょう。ダーリン。
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ほら、もうすぐ潮が満ちるよ。
後片付けの日が来るんだ。
だから早く仕度をして、
その小屋から出ておいで。
僕の小屋には、もうすぐ波がやって来る。誰の小屋にも来るけど、時期って決まってないから。
一週間で来たり、何年も来なかったりするんだ。気付かなかったり、大きすぎることもある。
ショーンおじさんは片腕がない。ずっと昔の「後片付けの日」に、小屋を離れなかったから。
潮が満ちたのには気付いてた。だけれど、用事がある気がしたんだ。
小屋を守ろうとしても駄目なんだって。いつもきっかけが、自分自身にあるから。
咲いたばかりのタンポポが
もう、飛び立つ準備をしてる。
満ちた岸辺が、
一度に浜辺に変わっていく。
なんだかざわざわしてきたね。こんどの波は、大きそうだね。
チャッピー、右手を噛まないで。僕はずっとここにいる。
おじさんはきっとね、体を失ったんだよ。
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そのままじゃどうにもならないけど
要するに僕は露出狂で
ピアノだとかギターだとか
紙にエンピツ擦り着けたりして
裸で居たい。
ラップ越しのキスみたいに現実的だよ
要するに君も偏執狂で
癖のある横文字が好きなんだ
今日は風が綺麗だね。日差しも。
目に見えるすぐそこまでは自信がついたけど、
誰も変わらない。そこから先は賭けなんだ。
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こんにゃくのぎっしり詰まった財布
ハンペンを取り出して、レジに叩きつける。
バシィッ!
とても冷たい響き。
屋台のおじさんに人間が降伏して
もう、丸二年になる。
肥やしになるとされては、家財を失った。
逆らう者は、がんもを投げ付けられた。
その度に、熱い煮汁が散った。
「出来合いの物ばっか、食うなよ。」
アルタ前に映る、おじさんのなみだ。
こうなる前に、
屋台のおでん、食べに行こう。
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やっと 僕を見たんだ
余計な、事はしないで って。
シャチを 海に逃がした
あおぞらの下へ逃がした
アメを、水で溶いてる
溶けない、事は知ってる
何で 君は笑った
取り立ての時期が来たって
何かを 空へ逃がした
イタチごっこの気がした
ひだりて アメを入れてた
いつのまに それをこぼした
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それぞれの座席の下には毛の長い小動物が、顔を隠しながら走り回っていた。
皆煙草をふかしていたが、むしろこの店が建つ前から、嫌々生まれるべくして生まれた様な、紫の粉塵、それに構成された煙が目障りだった。
小気味良くベルが鳴り、ミンクを纏った女が入って来た。最初のコーヒーを飲み終えたかどうかの時間だった。
レモンパイが届くと、彼女は上品に、いとも簡単に紅茶の入ったカップを叩き割った。
店中の、黒いスーツで出来た男達は、一人残らず襟を正して、羨みの目でそれを眺めた。
紫の粉塵は、誰にも気にされずに、しかし大胆に引火すると、雰囲気も人間も一緒くた爆破した。
そしてまた、入口のドアやカウンターの後ろから、気分の悪い擬音をたてそうな速度で、そっと、店中に渡って浸食を始めた。