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波瑠樹の部屋


[3] 初夏を連れた君
詩人:波瑠樹 [投票][得票][編集]

待ち合わせの喫茶店。

君のお気に入りのスウィングジャズが流れる‥

入り口横と店内奥に
小さな店には不釣り合いな程の
大きなスピーカーが
直置きしてある

リズムを刻む重低音が
足元からお腹の辺りに
響いてくる感じが、心地いいと‥
君は酔いしれる様に
満足気に目を閉じる。


店内は少し暖房がきつく
うっかりホットコーヒーを頼んだ僕は
タートルの首もとに
じんわり汗が絡み付く‥


君は年中アイスティーしか飲まない。

ストローで氷をカラコロと弄ぶ姿は、
とても涼しげな初夏の
風鈴の音を思わせる。


どうやら君は、
いつでも自分の傍へ
好きな季節を招き入れる
才能があるみたいだ‥




お茶を飲み干すと
今度は映画が見たいと言い
足早に店を出る。


のぼせる様な暑さから
一気に真冬の冷たさへと
連れ戻される

ポケットに手を入れ
少し前屈みに歩き出す僕の腕に、
君はスルリと腕を巻き付けながら
「寒いね」と北風に肩をすくめ笑う。


しかし
その言葉とは裏腹に
君から伝わってくる笑顔の香りは

さっきと同じ、
清涼感に満ちた初夏の熱を持ち
美しく眩しく僕の身体中を
吹き抜けていた‥。

2011/02/07 (Mon)

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