ホーム > 詩人の部屋 > まとりょ〜鹿の部屋 > An Chain...

まとりょ〜鹿の部屋


[192] An Chain...
詩人:まとりょ〜鹿 [投票][得票][編集]



彼は携帯を捨てた

シャツも捨てた

穿き慣らしたジーンズも捨てた

どれも皆 滑稽だったから。


彼は名前を捨てた

居場所も捨てた

長年築いてきた肩書きすら捨てた

どれも皆 彼を示すモノじゃなかったから。


彼は言う。

“幸せ”と云う言葉に翻弄される人生なら
いっそ不幸せでも“自由な人生”を生きたい。

捨て切れぬ彼の癖
頬をさすりながら笑う


彼の余命は持ってあと半年。


彼はカレンダーを捨て

コレクションした腕時計を捨て

コンクリートの囲いを越え

海を越え

時折鼻歌混じりに微笑んで


現実を捨てた


投げっぱなしにする前に捨てた。


繋ぐ事も繋がれる事も無く生きたいと一番に望んだから。

2007/11/09 (Fri)

前頁] [まとりょ〜鹿の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -