詩人:まとりょ〜鹿 | [投票][得票][編集] |
彼は携帯を捨てた
シャツも捨てた
穿き慣らしたジーンズも捨てた
どれも皆 滑稽だったから。
彼は名前を捨てた
居場所も捨てた
長年築いてきた肩書きすら捨てた
どれも皆 彼を示すモノじゃなかったから。
彼は言う。
“幸せ”と云う言葉に翻弄される人生なら
いっそ不幸せでも“自由な人生”を生きたい。
捨て切れぬ彼の癖
頬をさすりながら笑う
彼の余命は持ってあと半年。
彼はカレンダーを捨て
コレクションした腕時計を捨て
コンクリートの囲いを越え
海を越え
時折鼻歌混じりに微笑んで
現実を捨てた
投げっぱなしにする前に捨てた。
繋ぐ事も繋がれる事も無く生きたいと一番に望んだから。