詩人:チェシャ猫 | [投票][編集] |
艶やかに佇む月に欠けたる部分が消える頃
貴方は微笑む 全てを見透かしたように
この身を人間に繋ぎとめていた理性は崩れ落ち
真っ白な肌に牙を剥いた・・・
繰り返す短い吐息に中てられて
出口も見えない暗がりに堕ちてゆく
目を閉じて見えた微かな月の輪郭が
涙と一緒に欠けていく
手を伸ばしても届かない高嶺の花に
黙って焦がれ続けていれられる程
この心は上等には作られていなかった
目を背けたくなる程に汚らわしいこの手が選んだのは
力尽くで手折った花を
自分以外に手の届かない世界に閉じ込める道・・・
小さな窓一つの世界の中で
それでも美しく貴方は咲き誇る
差し込む月の光に照らされて
儚い美しさを描き続ける
こんなにも残酷な獣を
こんなにも穢れたこの腕を
抱き寄せて貴方は微笑むだろう
黙って全てを許すだろう
薄汚れた世界の神よ
誰にも必要とされない獣にも
一つだけ願いを叶えてくれるのなら
どうか私がこの世に生まれた事実を消して欲しい
身が裂ける程に慕っても叶わぬ思いを
牙に変えてしまったその前に・・・
いつまでも変わらず咲き誇る美しき月の下の花が
醜い腕に手折られてしまったその前に・・・
いつまでも月の下に
美しき人が微笑んでいられるように・・・