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チェシャ猫の部屋


[2] 月のキオク
詩人:チェシャ猫 [投票][編集]

今日もまたゆっくりと一日が終わり
ボクはたった一人の家路をたどる
吹き抜ける冷たい風と
田園から薫る稲の香が
そっと秋の訪れを告げてゆく

新緑の風を感じながら
キミと通ったこの道は
もうすっかり秋の色がにじみこみ
空っぽになってしまったボクを
ただ立待月が照らしている

あの夜浜辺で語り合ったことは
笑えるくらいにしょうもないことで
少ししめっぽい潮風と
砂のぬくもりを感じながら
二人でいることがただうれしかった

だけど月日は流れ時はたち
浜辺に書いたLOVEの字は
波が静かに運び去ったみたいで
変わってしまったキミと浜辺は
ただ立待月に照らされて

二人夜空を見上げて
寄り添いあった
ふっと優しく見つめて
口づけあった
あの夜感じた不思議なぬくもりと
言葉にできない優しい気持ちだけは
きっと両手に抱いていようと

きっと、変わらないものなんてない
そんなの分かっているけれど
それでもボクらは願っていたい
ずっと変わらないようにと
美しく輝くあの月に

2003/10/14 (Tue)

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