詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
ずっと昔
小学生の頃毎日あそんだ
お隣の、一歳年下の
のんちゃん
優しくて、ちょっぴりクールな、のんちゃん
犬のマルを連れて海岸に行った
マルに、私たち乗ったスケボー引っ張らせようとして
かわいそうだったよね
マル困ったような顔して、ちっとも進まなかった
かわいかったね
お母さんに黙って
二人で昼間にお風呂に入っちゃったり
リカちゃんで姫とバカごっこやった
のんちゃんは大きくなって東京に行っちゃった
もう全然会えなくなって
電話も繋がらなくなって
あのね、のんちゃん、こないだマルが、年とって死んじゃったんだよ
ある日のんちゃんが、帰ってきた
のんちゃん結婚するの?
おめでとうのんちゃん、またあの頃みたいに遊びたいね、
私はのんちゃんにお気に入りのアロマオイル全部あげた
のんちゃん
気に入るかわからないけど、よかったら使って
のんちゃんは笑いながら
大丈夫、大丈夫
使わなきゃ棄てるから
って言った
そっか、もう、
そうだよね、、
そっか、
さみしい でもやっぱり
ちゃんと笑わなくちゃ
のんちゃんお化粧してとても綺麗だよ
ありがとう
さようなら
のんちゃん
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男は人々の病を治す
奇跡の温泉を探していた
岩山だろうが
崖の底だろうが
めぼしき場所はすべて掘った
男の髪は乱れ飛び
顔は般若のよう
目はギラギラ輝いて
体は骸骨のように痩せ細り
人々は彼を狂人扱いし
誰も近寄らなかった
ついに男は素晴らしい成分の土の層を見つけた
あとすこし
あとすこしなんだ
もう体はボロボロ
最期が近づいてきていた
男は、仏を祈り
手を洗い
顔を洗い
粥を食べ
初めてたっぷりと寝た
男は、覚悟を決めて最期の場所を掘った
力尽きガクと膝を着いた時
つるはしの先から温泉は吹き出た
温泉が男に降り注ぐと
豆だらけの老いた汚い手は
若者の手に
髪は、はさりと銀色に腰まで伸び
淀み窪んだ瞳は
神々しい瑠璃色に
男は仙人になった
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
ケンちゃんは
いつも元気いっぱい
テレビゲームと車が大好き
とても気が利く
優しい
ケンちゃん
みんなの人気者ケンちゃんは
会うたびに何か持ってくる
楽しい本
変なおもちゃ
お菓子にジュース
いつもなにやらお土産もって
みんなのケンちゃんはやってくる
ケンちゃんにもきっと悲しいことがあって
一人では泣いてるかもしれないけれど
ケンちゃんの泣きべそなんて誰にも想像できなくて
ケンちゃんは
大きな口開けて
歯並びのいい歯をみせてかすれ声で笑うんだ
みんなケンちゃんを大好きで
ケンちゃんもみんながきっと大好き
いいな、いいな
ケンちゃん
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
ぶどうはおいしい
もきもぎ、ぶどう
もぐもぐ、やっぱり
おいしいぶどう
パパのかばんも
ママの掃除機も
きっとぶどうが詰まってる
トラックも新幹線も
ぜんぶ、ぶどう
お月様のなかみも
ぜんぶ、ぶどう
だってぶどうはすごいんだ、おくちの中がジュッてなるんだ
かんちゃん、みちくん、せいちゃん、みんなに
ぶどう教えてあげるんだ
もぎもぎふさふさ
いっぱいぶどう
もぐもぐぽちょんと
おいしいぶどう
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
助けて下さい
私は、生い立ちがとっても不幸なんです
片親で、学生時代は貧乏で、虐められたんです
太っていて顔も悪いし
取り柄もひとつもない
性格が暗くなっちゃったのはこういう訳なんです
いつも過去の嫌な事が忘れられなくて
死にたくなっちゃうんです
もし顔がよくて
痩せていて
父さんもいてくれて
嫌な思い出が一つもなかったら
私は普通の元気で幸せな大人になれたんです
私はこれでもがんばってるんです
精一杯やったんです
でも、もう少し優しくされたらたぶんもっと頑張れる気がするんです
だからこんなに不幸な私をどうか助けてください