詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
信じることで
人は何倍にも強くなる
人を信じられたら 自分も信じられる
誰も信じられなければ
自力で歩くのすら困難になる
時には
信じられない人を見捨てて
信じられる人を捜す勇気も大切だ
その人の肩を掴み
正面から瞳を見て
はっきり尋ねよう
瞳をそらさず
まっすぐに答えてくれる人が
見つかるだろう
愛は始めから空気のように
あなたを包んでいる
息を止めているのはあなたで
愛がどこにも見当たらないと思っている
すべてを信じて呼吸ができたら
きっと宇宙の果ての境界線だって
掴めるだろう
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よくみてごらん
太陽は、やる気のない時は適当に照っている
月もなんとなくダルい時はいつもより余計に傾いている
海も満ちたり引いたり
時々わかんなくなって
満ちっぱなしになっている
子供もなんとなくスランプのときは
一人で遊んでたりする
猫もめんどい時は家でウンチする
鳩も 羽がボサボサでゴミがついていたとしても
車の下でぼーっとしてたりする
そんな感じで適当でいいですよ
人間だからって
なんなんですか
頑張らないでもいいんです
じゃあ
おやすみなさいませ
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切れ長の瞳が
太陽を睨み付け
作業着から伸びた白い腕が
ボロボロの鞄をつかんでいる
灼熱のコンクリートに灰色のスニーカー
細い指先の、薄汚れた絆創膏
ここは戦闘員の街
すれ違う人々はただ前を向いている
人も車も、時計のように規則正しく、動く
甘えのない冷たさ
美しい
戦うことを、決めた者たち
振り返らない、覚悟
生きると いうこと
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やらなくちゃならないことばかりしていると
どうでもいいことが、したくなる
どうでもいいことばかりしていると
何か意味のあることをしたくなる
何も話すなといわれると何か話したくなり
なんかしゃべれといわれると何も思い浮かばない
明日死ね、といわれると怖いが
明日もちゃんと生きろ、といわれるとめんどくさくなる
捨てたものを、誰かが大喜びで拾ったら
なんだか惜しいことをしたような気になる
そう
感情なんて相当いい加減なモノ
絶対的なモノなんかじゃなく
外の世界に影響されまくりのアマノジャクなのさ
絶望だって背景をとっかえたら
大笑いなのかも
八方美人なのが感情さ
そんな浮気者ほっといてさ
僕らの揺るがない信念だけ見つめて
歩いていこう
できる、さ
君が、そこに「居る」のなら
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冷たい石の積み上げられた空間に
霧が呼吸をするように揺らいでいる
裸足で大地の抱擁を受け入れ
かつて、この甘い香が立ち込めた時
泉と雨と花と夜の香
霧の隙間 暗くしめった緑
滴り落ちる雫
密集するような湿度
シダの間を飛ぶ鮮やかな鳥たちの歌
甘美な誘惑
断れないダンス
薬のように強く
甘い幻想に揺らぐ魂
崖下に眠る意匠
何事も無かったように
その
甘い香は白亜期より変わらず
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君は知らない
僕は今はだかんぼで
チェリーパイを食ってるかもしれないんですけど
君は知らない
僕は毎日 生ハムメロンの夢を見ているんですけど
君は知らない
砂時計の砂は麻薬でできているのに
君は知らない
僕は 今泣いているのを
君は 笑いながら
楽しい死に方を考えている
そして僕が星になっても
君は知らない
君は知らなくてもいいよ
温かい星に
僕が憧れていることも
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うっとり 貴方を
さがしている
貴方の仕草を
貴方の輪郭を
香りを
時間を
さがすことは なんて
甘美な亊
ため息が出る程に
どうしても思いだせない愉しい夢のように
瞼に彩る、教会の緑のように
すべての呼吸のなかの
貴方の唇からもれる
気まぐれな歌を
気違いみたいに
欲しくてたまらなくて
いつも息切れしながら
足は縺れながら
そう、
また追いかけている
私の爪の先が 貴方の肌を掠めようとした寸前
貴方の黒い瞳が私を射る
震えて ゆっくりした瞬き
バラバラと切れる想いが砕け散って
すべては振り出しに戻され
両手を何もない空にかざして
追跡は終る
いっそう霞む貴方を
幾度も風になぞり
赤いリボンを握り
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君のガラスの首筋に
よそよそしいキスをして
また
私の唇は傷だらけ
それでもあの午前の
甘美な夢から醒めたくなんかなくて
君の首や肩の温かさに酔いしれている
羽さえも 君の首すじに触れたらはらりと切れる
残酷な程、鋭く、優しい君のからだ
用意された君の構造
内部
体温
真っ正面な君のすべて
生臭いものなんて嫌いだけれど
君の心臓になら 触れさせて
両手が傷だらけになっても
きっと日だまりのような温もりを感じているね
屈託のない瞳で私を許す君
君の中で許される私
もはや原型を留められないほどに
そのガラスの首筋に
傷つけられている
黒い髪も はらはらと切れて
君の白い脚の間に堕ちる
私はいつまでも
甘い傷の数を数えている
街の人通りが増えても
きっとこの部屋からは
でられないから
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ハムミンクスは プニっとしていて
お風呂上がりはさらさらで
ご飯を食べる時きょとんとしている
ハムミンクスは野菜を買うと喜んで
ふさふさになる
ハムのところが丸くて
ミンクスのところが温かい
しゃべれないけど君だけが大好きで
いつも少しだけ
がに股になって
あそんでる
朝も夜も
君を見てる
君が無視したら 少しは一人で遊ぶけど
きっとまたしばらくして
君をきょとんとみている
ハムミンクスに気付いたら
少しだけ触ってあげて下さい
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何千 何万もの、鳥
鳥の、群れ
太く、黒い
チューブのように
歪みながら群れをなす、鳥
鳥たちが、飛んでいる音が聞こえている
もう 遥か
長いこと
聞こえ続けている
無数の羽音と鳴き声の混ざったような
鳥の群れる独特の音が
もう遥か何年も
響いている
私は 人々に聞く
鳥は群れていますか、と
人はいつも
鳥は群れていません、と答える
鳴き声なんて なにもしません、と
明け方
山も空も呼吸を潜め
全ての音が止まるとき
鳴き声は
いっそう響き渡る
薄暗がりの中で、ただその群音のみが響いている
命は鳥のかたちをしている
それは 輪をなす命の音色
私の耳に聞こえる音色
あらゆる生命が、躍動し
群れる音
長さすら正確にわからない
鳥たちの群れ
威勢良く元気な命が群れの先頭を無し
真ん中には、まだ幼い
若い命たちが、守られるように飛んで
末尾には点々と、
今にも尽きそうな
老いた命が 細く 細く
列なる
しだいにほんとうに飛ぶ力を失い
渇いた地面に降り立つのは、枯れた命
私には聞こえる
鳴き声、鼓動、羽音、
彼らの巻き起こす緩やかで
時に激しい風の音が
休む事なく、それは
ただ響く
はじまりや終りもなく
それは
響き続けている
私や君の記憶の、遥か彼方
始まりの場所から
人々は空を見上げて言う
鳥の羽ばたく音なんてしない、と
私はいつも
音の根源を探しながら
空を眺めている
何も見えない空を