ホーム > 詩人の部屋 > 剛田奇作の部屋 > 投稿順表示

剛田奇作の部屋  〜 投稿順表示 〜


[341] ハルミちゃん
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

街の駅は土砂降りで


私はゆっくり歩く、晴美ちゃんを追い掛けて


どこまでも階段をかけ昇る


ホームにはハルミちゃんがいた


短い黒髪が、濡れて


まっすぐ線路の闇を見ていた


ハルミちゃんは綺麗だった


黒いキュロットに ベージュのカーディガン


細い、華奢な足


ハルミちゃんはとても綺麗だった


私は汚いスニーカー
ずぶ濡れの、ダサい女


ネズミみたい


ハルミちゃんは


同じずぶ濡れでも


白ネコみたいに綺麗で




2010/02/15 (Mon)

[342] 美しき不完全
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

ああ 神様、

私から死を奪わないで下さい

いつか死ねるから

今を愛しく思えるのです

いつか死ぬから

今をがんばれる

いつか死ぬから

風が気持ちいい

いつか死ぬから

この世のすべてが楽しく
眩しい

どんなに愛してもいつかすべて無くなるものだから

大切にできる

そう、無限でないことこそが

私たちの原動力

不完全は楽しい

完全な神が作った世界に

完全に、不完全な私たちがいる


不完全だから、すべてが必死に愛おしい日々




2010/02/17 (Wed)

[343] でくのぼう
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

横になれば僅か一畳分くらいの

肉の塊

でくのぼう、私

でくのぼうは、今日もあれこれ手足を動かして

なにやら狭い空間で生命活動を続けている


日々、家族と呼ばれる人間たちのために食糧を調達し、加工し、容器に入れて出したり、片付けたりする、そして時々変な声を出したりする


多分、でくのぼうは燃えるゴミに出せるだろう(火曜と木曜)


付属品の眼鏡は燃えないゴミ(水曜のみ)


たった一畳分の、でくのぼう


ゴミになっても世界は普通に回るだろう


それでもきっと、でくのぼうは 感謝している


でくのぼうなりにいっぱい遊んだし

公の場で詩もたくさん書かせてもらい

高級チョコレートも食べたし

ブルーチーズも数え切れないくらい

でくのぼうを愛してくれる人に会えたし


だけど ここ一世紀くらいでずいぶん人道的な世の中になったので

でくのぼうは月曜も木曜もゴミに出されずにすむのだ


そうしてあと数十年せっせと手足を動かして

良い事や 悪い事や
そのどちらでもない事を 行い


いつかは燃えることだろう



2010/02/17 (Wed)

[344] 強さ
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

本当に強い人は

きっと、みんなと同じように弱い

けれども

自分の弱さや

無能さや

浅はかさや

汚さ

狡さ

暗さ

自分のそれらを

真正面から受け止めている

言い訳なしに

誰のせいにもせずに

そのまま冷静に受け入れている

改善の努力とか実行とか精神力とか

そんなもの以前に

ただ ただ 目を背けず

ありのままの自分を

先ず、認めている




2010/02/21 (Sun)

[345] 
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

おもしろい詩をよんで


素敵な詩を読んで


深く素晴らしい詩を読んだ


私もそんな詩が書きたいと思った


しかし頭を振り絞っても 書けなかった


結局、私が書けたのは


私が書きたい詩だけだった



2010/02/23 (Tue)

[346] 
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

私が生まれてなかったら

世界は元気に、
世界だっただろう


私の家族は子供が一人いないだけで平和だろう


私の友達は私と過ごした時間分、誰かと過ごすか、別の楽しみをしただろう


「いない私」を求める人はいないだろう


存在しないものは求めようもないのだから


誰も私を望まず、欲せず、攻撃せず、否定せず、認知せず、


世界は毎日クルクルまわるだろう


よくよく考えれば


孤独なんかより遥かに恐ろしいことだ


しかし私達は、

無だった


そう、だから


あなたの考え、悩み、感情、行い、苦しみ、戦い、歓び、それらそのものこそ


「答」だ


結果でも、過程でも、良し悪しでも、ない


無から来た、唯一の有形物


「答」


世界は、無い


あなたが、在るだけ





2010/02/25 (Thu)

[347] 過去、思うこと
詩人:剛田奇作 [投票][編集]


あの逃げたかった日々が

今になってこんなに愛しいとは


あの頃は毎日が苦しかった

だけどその分、濃厚な人々の愛にもめぐり合えた

苦しかった分、日差しがまぶしかった



ねえ それをあの時わかっていたら


もう少し頑張れたのにね


結局私は、すぐ逃げ出していた


夏の駐車場はとても暑かった


ねえ どうして 人は


二度と手に入らないものを想い続けてしまうんだろう


淡い紫の空と、忘れてしまったメモ


あの季節の君の強い眼差し








2010/02/27 (Sat)

[348] シロツメ草
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

ねえ 本当に強くなって

いつかもう一度

会いにいくよ


久しぶり なんて

空々しい挨拶やめてね


もう一度


あの消えそうで

苦くて甘い

生暖かい午後を過ごそうよ



心配ないよ

すぐに帰るから


私はきっと


近づく、電車の音をきいてる


知ってるよ


すべては変わってしまうんだって














2010/02/27 (Sat)

[349] 下り道
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

自転車で 下り坂を走る

ぐんぐん景色を追い抜いて

擦れ違いの
ワンコをつれたおじさんも

子供も

塵も

風も

すごいスピードで振り切ってく

ただ

太陽と雲だけは振り切れなかった


どんなに急いでも
僕らが僕らを

忘れないように



2010/03/03 (Wed)

[350] 思い通りに行かないこと
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

壁があるぞ、と思う人がいる


驚いて叫ぶ人がいる


これは小さい小川だと思う人がいる


いいや、地の果てまで続く砂漠だという人がいる


何やら面白いパズルがあるぞ、と思う人がいる


これは壁じゃなく近道だと思う人がいる


これは金鉱だと思う人がいる


見なかったことにして引き返す人がいる


恐れおののき逃げ出す人がいる


誰かを呼んできて
なんとかしてくれ と頼む人がいる


自分がどうしたいのか分からず じっと佇む人がいる


泣き出す人がいる


可笑しいと笑いだす人がいる


そのことにすら気付かない人がいる


そこに確かに、思い通りにならない事が


在る



2010/03/03 (Wed)
391件中 (291-300) [ << 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >> ... 40
- 詩人の部屋 -