詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
あまり君がセクシーにトースターから飛び出すから
ショックで腰が抜けそうさ
ハチミツとシナモンが嫉妬で喧嘩しながらも
君のベッドのぬくもりと優しさに降参したみたいだ
ブラックコーヒーを立てるように謙虚な君
けれども君のやさしい香りは
150年の歴史だって、かなわないさ
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
喉が渇く 真夜中
ピンクの石鹸の泡と
チープなMC
5分で出来る「愛」なんてないんだよ
触れても、触れなくても、君は君
誰かに触れられていても、君は君
「偽り」でもいいなんて贅沢
温度と引き換えの代償、そして、朝
あまり難しく考えるのは、好きじゃない
余りにも個人的な理由で
君のメガネを壊した、午後
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
私ってなに
絵かきで
映画好きで ゲーム好きで
私ってなに
妄想して
笑うピエロ 泣き虫のお姫様
自暴自棄な乞食
歌ってる時は スザンヌ・ベガで
お風呂では、おばあちゃん
お菓子を我慢すると、体重を気にする多感なティーンズ
夕飯作ってる時は、コックさんで
私って なに
冷やし中華を見事に消化する内蔵をもつ
ウンチがでるので、紙でふきます
歯ブラシをもったら、歯を大事にする普通のひとで
いまは 詩人で
文字を書くひと
夜は、目を閉じて君に会いたいって思う切ない恋人
夢の中では、くらい森を彷徨う小さな少女
私ってなに
ここにいるのは、私
ここにいたのは、私
微笑むのは
触れるのは
注いでいる
注がれている わたし
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
下まぶたに
お水が溜まる
溢れて ポロリ
地球が君の涙を キャッチ
溢れて こぼれて
また ナイスキャッチ
君も僕も おんなじナミダ
お友達に、オモチャを取られたあの子が ポトリ
給食のヒジキを食べられなくて、あっちの子が ポトリ
恋人とサヨナラしたお兄さんが
ポト ポト ポトリ
選挙に落選しちゃったおじさんが
ポトリ ポト
おじいさんが亡くなって、ひとりぼっちのおばあさんが
ポトリ
試合に負けた 少年が ポトリ
殺人犯が、刑務所からでて
被害者の家族の前で
ポトリ
今も 昔も
はじまりも 終わりも ポトリ
真ん中も ポトリ
おんなじ ポトリ
神様が ポトリ
みんなで ポトリ
どんだけの ポトリ が蒸発して
空に還っていったのかな
どんだけの ポトリを 地球はキャッチしたのかな
ポトリ はみんな一緒
君も 僕も
おんなじ ナミダ
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花は自分を愛してくれるひとにも
愛してくれないひとにも
平等に、美しい姿を見せてくれる
愛してくれないと分かってるひとに
自分のありのまま、すべてを差し出すことは
怖いこと
花は
しなやかで
強くて
花は
たくましい、
だから
そんなに 澄んでるんだ
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
先週
うっかり 飲み込んでしまった 言葉が
今朝 僕から出てきた
真夜中の牛乳が 効いたんだろう
見つめ合ったが
お互いに 気まずくって
じゃあ
と言って 流そうとしたら
言葉は流される瞬間に
オレンジ色の 蝶になって
便器から舞い上がった
まるで花びらの淵から 飛び立つように
それは 優雅に
それは
それはもう
はじめから僕のものじゃ ないみたいだった
主を失って なぜか一層輝いてる言葉に
意外にも 少し
目眩がした
フワリと舞う度にきらめく
オレンジの 綺麗な鱗粉は
僕の1Kの 小さなアパートの窓 から漏れ出し
空 高くまで 漂っていく
蝶は
何かを探すように 弧を 描き
不規則に 揺らめいて
いつしか窓の向こう側
ふと
取り残されたようで 切なくもあるが
いつものコンビニに、弁当と週刊誌を買いに行く
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
しゃかしゃか うっとおしい
水滴で濡れた
コンビニの袋
ソファに 放り
コートも 放り
充電の切れたiPod が 落ちる
ふと よぎる
君がいつもしていた
あの マフラー
似合ってないでしょ?
って 清楚な高い鼻をこすってさ
そうだ
君だっけ
先に 歩き出すのはいつも
去りたい気分なのは 僕なのに
怪我するのもいつも 僕
喫茶店で負傷
石垣で嗚咽
シャツの裾までも 過去を縫い付けた って
また 笑われた
せわしない神様に
ゆっくりまばたきするのは 飽きた証拠?
レジのそば 人のいない禁煙席
ストローを指す 仕草
窓の向こう、雨の駐車場
くしゃみの次の瞬間の、君の瞳孔
無数の星の一つが 僕で、
ある 一つが 君なら、
どれだけの距離で 存在できるんだろう
ロバの形の コースターを 窓に貼って
二人でいたずらをする
「影すらも
交わらず 塵になったの?」
触れたかった
差し出された君の、湿った指先
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
夢とか 希望とか
そんな笑えるくらい
疲れること 言わないで
私はあなたと、ただ真っ逆さまに
現実の中に
落ちていきたいだけ
未来? 夢? 希望?
そんなことより
今
この
りんごの香りにうっとりして
突き抜けるほど高い 寒空の青を見て
猫の神秘的な 瞳を見て
オムライスの出来立ての 黄色と赤と
湯気の匂い
今
ときめくこと 忘れて
言わないで
未来なんて
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
パパとママの 内臓が 散らばる
真っ赤な部屋で くつろぎ
カモミールティを飲んで
聞こえるのは 澄んだ 鳥の声
白いレースのカーテンに
愛しい程 激しく 飛び散った しぶきのあと
爪先に 当たった 肺の破片 昼明かりの差し込む
窓部に 落ちた脳の一部
ふと 本棚に 眼球が
パパママ 何がどちらのものか もう判らないよ
眼球は
パパとママので
全部で四つ
テーブルに並べてみた
不思議と 優しい眼差し
初めてだ こんなにもじっと 暖かく
僕を見てくれたのは
とても嬉しくて 思わず微笑んだ
今日は僕の誕生日
パパ ママ
産んでくれて ありがとう
詩人:剛田奇作 | [投票][編集] |
会社帰りに 踏みつけた狂気が
むくむくと起き上がって
目があった
夕飯を作ってる最中だった
やるか やられるか それとも 飲み込むか?
いや もう
こうなっては 何もかもが手遅れだ
飲み込んでも 腹を食い破って
出てきて 俺の死体の上を這いずって回るんだろう
野菜炒めの焦げる匂いに反射的に火を止める
0.4秒
「自殺なんて笑えるオチ」は期待しないでくれ
1,2 秒
俺は 猛烈な速さで狂気をつかみ
電子レンジに ブチ込み
800w「強」に設定し スタートを押した
約19秒
1Kのアパートに狂気の「断末魔」が響き渡る
俺は必死で 目を瞑ったまま レンジのドアを押さえ続けた
次第に悪臭と 壮絶な 吐き気で
意識が遠くなり キッチンの床に倒れていた
朦朧とする意識の中で 誰かが俺の手を握るのがわかった