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剛田奇作の部屋  〜 新着順表示 〜


[351] 息子へ
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

愛する息子よ


私はご飯をつくりあなたの身体を成長させる事ができる


どこか痛かったら病院に連れていく


あなたに色んな知識や

景色を紹介することができる


遊びを教えることができる


けれども


楽しさを教えることはできない


楽しむのは、「あなた」だから


言葉を教えられる


けれど


あなたの感情は教えられない


そしてあなたのしたい事も教えられない


あなたの生き方は 私が決める事ができない


あなたは、きっとたくさん苦しむだろう


そしたら産んだ私を、憎むかもしれない


私はためらわず言うだろう


責任は全部私がとる
あなたが本当にいいと思った事を、自分でやりなさい、と


今まで完璧な人間を見たこと無いから


あなたもきっと完璧じゃないだろう

たくさん失敗するだろう


だから そこは許して欲しい


けれど完璧でも 人生やることがなくてつまらない、と恨まれたかも知れない


真剣でなくていい
走らなくていい
休んでいい


苦手より得意を選んでいい


だから不完全からの道のりを
楽しんでほしい


ゆっくり一度しか見れない景色を味わいながら


旅のチケットは渡した


行き先は
あなたに任せたよ


私に待つ時間をくれてありがとう


一生、待ってるよ

いつまでも
いつまでも





2010/03/03 (Wed)

[350] 思い通りに行かないこと
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

壁があるぞ、と思う人がいる


驚いて叫ぶ人がいる


これは小さい小川だと思う人がいる


いいや、地の果てまで続く砂漠だという人がいる


何やら面白いパズルがあるぞ、と思う人がいる


これは壁じゃなく近道だと思う人がいる


これは金鉱だと思う人がいる


見なかったことにして引き返す人がいる


恐れおののき逃げ出す人がいる


誰かを呼んできて
なんとかしてくれ と頼む人がいる


自分がどうしたいのか分からず じっと佇む人がいる


泣き出す人がいる


可笑しいと笑いだす人がいる


そのことにすら気付かない人がいる


そこに確かに、思い通りにならない事が


在る



2010/03/03 (Wed)

[349] 下り道
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

自転車で 下り坂を走る

ぐんぐん景色を追い抜いて

擦れ違いの
ワンコをつれたおじさんも

子供も

塵も

風も

すごいスピードで振り切ってく

ただ

太陽と雲だけは振り切れなかった


どんなに急いでも
僕らが僕らを

忘れないように



2010/03/03 (Wed)

[348] シロツメ草
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

ねえ 本当に強くなって

いつかもう一度

会いにいくよ


久しぶり なんて

空々しい挨拶やめてね


もう一度


あの消えそうで

苦くて甘い

生暖かい午後を過ごそうよ



心配ないよ

すぐに帰るから


私はきっと


近づく、電車の音をきいてる


知ってるよ


すべては変わってしまうんだって














2010/02/27 (Sat)

[347] 過去、思うこと
詩人:剛田奇作 [投票][編集]


あの逃げたかった日々が

今になってこんなに愛しいとは


あの頃は毎日が苦しかった

だけどその分、濃厚な人々の愛にもめぐり合えた

苦しかった分、日差しがまぶしかった



ねえ それをあの時わかっていたら


もう少し頑張れたのにね


結局私は、すぐ逃げ出していた


夏の駐車場はとても暑かった


ねえ どうして 人は


二度と手に入らないものを想い続けてしまうんだろう


淡い紫の空と、忘れてしまったメモ


あの季節の君の強い眼差し








2010/02/27 (Sat)

[346] 
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

私が生まれてなかったら

世界は元気に、
世界だっただろう


私の家族は子供が一人いないだけで平和だろう


私の友達は私と過ごした時間分、誰かと過ごすか、別の楽しみをしただろう


「いない私」を求める人はいないだろう


存在しないものは求めようもないのだから


誰も私を望まず、欲せず、攻撃せず、否定せず、認知せず、


世界は毎日クルクルまわるだろう


よくよく考えれば


孤独なんかより遥かに恐ろしいことだ


しかし私達は、

無だった


そう、だから


あなたの考え、悩み、感情、行い、苦しみ、戦い、歓び、それらそのものこそ


「答」だ


結果でも、過程でも、良し悪しでも、ない


無から来た、唯一の有形物


「答」


世界は、無い


あなたが、在るだけ





2010/02/25 (Thu)

[345] 
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

おもしろい詩をよんで


素敵な詩を読んで


深く素晴らしい詩を読んだ


私もそんな詩が書きたいと思った


しかし頭を振り絞っても 書けなかった


結局、私が書けたのは


私が書きたい詩だけだった



2010/02/23 (Tue)

[344] 強さ
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

本当に強い人は

きっと、みんなと同じように弱い

けれども

自分の弱さや

無能さや

浅はかさや

汚さ

狡さ

暗さ

自分のそれらを

真正面から受け止めている

言い訳なしに

誰のせいにもせずに

そのまま冷静に受け入れている

改善の努力とか実行とか精神力とか

そんなもの以前に

ただ ただ 目を背けず

ありのままの自分を

先ず、認めている




2010/02/21 (Sun)

[343] でくのぼう
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

横になれば僅か一畳分くらいの

肉の塊

でくのぼう、私

でくのぼうは、今日もあれこれ手足を動かして

なにやら狭い空間で生命活動を続けている


日々、家族と呼ばれる人間たちのために食糧を調達し、加工し、容器に入れて出したり、片付けたりする、そして時々変な声を出したりする


多分、でくのぼうは燃えるゴミに出せるだろう(火曜と木曜)


付属品の眼鏡は燃えないゴミ(水曜のみ)


たった一畳分の、でくのぼう


ゴミになっても世界は普通に回るだろう


それでもきっと、でくのぼうは 感謝している


でくのぼうなりにいっぱい遊んだし

公の場で詩もたくさん書かせてもらい

高級チョコレートも食べたし

ブルーチーズも数え切れないくらい

でくのぼうを愛してくれる人に会えたし


だけど ここ一世紀くらいでずいぶん人道的な世の中になったので

でくのぼうは月曜も木曜もゴミに出されずにすむのだ


そうしてあと数十年せっせと手足を動かして

良い事や 悪い事や
そのどちらでもない事を 行い


いつかは燃えることだろう



2010/02/17 (Wed)

[342] 美しき不完全
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

ああ 神様、

私から死を奪わないで下さい

いつか死ねるから

今を愛しく思えるのです

いつか死ぬから

今をがんばれる

いつか死ぬから

風が気持ちいい

いつか死ぬから

この世のすべてが楽しく
眩しい

どんなに愛してもいつかすべて無くなるものだから

大切にできる

そう、無限でないことこそが

私たちの原動力

不完全は楽しい

完全な神が作った世界に

完全に、不完全な私たちがいる


不完全だから、すべてが必死に愛おしい日々




2010/02/17 (Wed)
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