詩人:剛田奇作 | [投票][得票][編集] |
酷く雨が降っていたので
僕は、始め、それが雨漏りだと思った
しかし、それは油だった
家のちょうど中央に位置している柱の根本に
黒く、まあるく染み出していた
拭っても拭っても染み出すので気味が悪かったが
とりあえず放っておいた
ある日、母から電話がかかってきた
あんた、油、ちゃんとしてる?
油?
ああ、あれ
なんともならないよ
きちんとなさいよ
今のうちだからね
うるさいなぁ
忙しいんだよ
僕は、電話を切った
柱が油で溶けて沈み、少し家に歪みがでたらしく
ある日突然、扉が閉まらなくなった
嫌な予感がしてベッドを持ち上げるとやはり油が染みていた
新聞を敷き詰め、週に一度代えるのが日課になった
彼女は、ポッキーを食べながら
そうなっちゃったらもう駄目よ
貴方も沈むわよ
と、悪戯に笑っている