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剛田奇作の部屋


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詩人:剛田奇作 [投票][得票][編集]



真夜中に
目が開くと


やや激しい雨音が
小さな部屋を包んでいた


何かに導かれ
虚ろな黒目は魚のように
暗闇をたどり



私は「それ」が 始め



何かに照らされ、光っているペンケースのようなものと、思った

枕元にこんなものが在っただろうか?


そんなことを考え


「それ」に触れてみようと手を伸ばした


「それ」はすっと
消えた


、、、光、だ


「それ」は光る物体ではなく


ドアの隙間から差し込む


一筋の光だったのだ


そうして

泣きそうになるような震えを覚えた
私は


おそらく
一度は物体と確信したはずのものが
存在自体、無かったとゆう心細さと


ただ、その線が

細く
強く
射している方向は


考えれば考えるほど


肥大し
怖くなり
不確かになるもの


明日のようなものに酷似していたのだ


私はふいに その不安定が映しだす幻の調和

それが自然という、
「真理」の美しさを

一瞬、覚った

そして
その瞬間
失われた感覚は二度と戻らないことを


本能的に悟ったのだ
その


悲しさと
それゆえの
美しさ…たゆとうものに


強く惹かれ


私は

泣きそうになったのであろう


雨音の叩く
小さな夜に







2009/01/31 (Sat)

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