ホーム > 詩人の部屋 > 剛田奇作の部屋 > 蝶

剛田奇作の部屋


[21] 
詩人:剛田奇作 [投票][得票][編集]

深呼吸と同時に
蝶を飲み込んでしまった

咳をして出そうとしたが
蝶はもがくほど
奥へ行ってしまう

そのうち気管支の辺りで ピタッと張り付いて
止まった

呼吸すると
蛍光ブルーの粉が
口と鼻から
シャラシャラ漏れる

お腹 空いたわ

と蝶が言うので
ハチミツを舐めてやったら

美味しい
と言う

支障が無いので
そのまま生活した

彼女とセックスをしている時に

ダメ、もうちょっと優しくよ
ちょっと!早すぎるわ!
もっと丁寧に

とか色々言うので
うるさい、と怒ると
それきり
彼女がマグロになった

ある時 蝶が

さびしい

と言うので 公園の花壇に行った

彼女がフェロモンを出し 雄を誘惑したので

九匹もの蝶が寄ってきて
そのままずっと
着いてきた

電車に乗るのも
飯を喰うのも
仕事中も
九匹の蝶が顔の前を
ヒラヒラ舞っている

取引先のお客さんには
おや、素敵だね
と言われ中々好評だ

九匹は
彼女に一目逢わせて欲しいという

ちょっと焦らしたほうが いいのよ

などと言って
中のメスは出ようとしない

そのうち オスがハ匹になり七匹になり…
最後の一匹になった時

メスが出たいといったので
彼女にピンセットで出してもらった

ところがオスが俺の彼女に 一目惚れした

出たメスもあんまり好みじゃなかった
と言い花壇に帰った

オスは彼女の傍にいたいというので

着替えと風呂の時は離れると言う条件でOkした

しかし
最近 デートの度に 気になり
キスも落ち着いて出来ない

蝶は 涙目で
構わないです 僕は
と言う




2008/12/11 (Thu)

前頁] [剛田奇作の部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -