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剛田奇作の部屋


[271] 麻酔
詩人:剛田奇作 [投票][得票][編集]

虫歯になった
歯医者に行った

雨が降っていた

麻酔をした
当然、ガリガリ削っても痛くない

先生ありがとう

しばらく痺れが続きますから

はいわかりました

帰り道、左あごに雨が当たってもわからない

気持ちわるい

左あごの感覚がない

抓っても、唇噛んでも

自分のものじゃないみたい
そこだけ、誰かみたい

味気なくて、寂しい

早く私の左あごを取り戻したくて

私はずっとマッサージした、他の事は手に付かず

三時間後、ようやく私の左あごになった

嬉しくて
お帰り、と言った
家族に再開したみたいに
こんなにも私は自分の体を愛していたのか

私は思った

痛みを無くすことは、生きてる喜びも同時に失うこと

感覚があるから、素敵
たとえどんな感覚でも

痛みでも
悲しみでも
くすぐったさでも
涙を流すあの感じでも

感覚のすべてが私

根拠はないけど

生きてる、んじゃなくて

生かされていた、って





2009/10/06 (Tue)

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