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剛田奇作の部屋


[376] 触れられた無形
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その悲しみに名前は無く


その傷に名前はない


題名が無くても
それは美しい、歌


声にならない祈りのような


生まれゆく者たちと


彼らの闘う理由


激痛の中でみた
夜明けは


青白いくっきりとした
建物の輪郭


動き出す生き物の影


息を飲むほど幻想的な光景だった


その感覚に名前をつけられないのは


心が生きている証


その身体で育むのは
時間でも過去でもなく


永遠の中に留まる
一瞬のあたたかい血潮


強固な記憶


美しい 美しい 美しい

愛を知らなかった者たちが


其れを、
知るということ





2010/06/08 (Tue)

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