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剛田奇作の部屋


[62] グラタンとバターロール
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

古い音楽と回廊が駅で出会う幸せな夢を見ても、

ずっと昔に割れたコップが、邪魔

まだ絵は描けない

それでも乾燥した油絵の具を、油で溶いて、パレットに広げる

それはやがてまた乾燥する、だけどもう
気にするのはやめる

これから旅立つなら
荷物を減らそう

大好きな洋楽三枚と
アロエのクリーム
痛み止め
つるつるのヨレヨレのハンカチ
ベンハーのビデオ
絵の具

他にはもう要らない

黄土色の大きな不必要に角張った冷蔵庫

あの中にぜんぶしまおう

きっと大きなゴーゴーという音にびっくりしてみんな大人しくしているだろう

そして
意地を張って居留守を決め込んで、ボロボロだった あの古い夏の夜に行きたい

あの人との会話を最初からやり直して 本当の
気持ちを確かめる

私は子供じみてなんか、ないから

夢なら自分勝手に抱きしめるけど
現実ならそうはしない

抱きしめたら気持ちいいはずと分かっても
する訳ない

でもさ なんで
食べても食べてもお腹空いちゃうんだろ

グラタンとバターロールがこんなに腹持ち悪いとは知らなかったよ



2008/12/15 (Mon)

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