詩人:三歩 | [投票][編集] |
やっと叶った夢は
もはや夢ではなくなるように
君が思っていたほど
地平線ではなかったから
近くにいても
10メートル先が、見えなくて
いっそのこと
少し近くで
笑い合っていたかった
心に重力と浮力をあたえよう
これ以上、浮つくことのないように
これ以上、沈むことのないように
君が思っていたほど
太陽ではなかったと知ったから
いっそのこと
月明かりの中で
咲いてしまえばよかったのにね
今となれば
これが叶わぬ夢かもしれないけれど
少し近くで
笑い合っていたかった
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八角形のグラス
まるいテーブル
口をつけてないストローと
水滴に濡れたコースター
空も海も
始まりはここからいつも平行で
互いの青に
踏み込むこともなく
帆船近くの水平線で
無理やり
垂直に分離
グラスの中のアイスティー
氷がずれる、音がした。
琥珀色の液体
内側からなぞって
日常へと浮上したがる、
いくつもの気泡
あの日。
氷点下に閉じ込めてみた
君への残骸
グラスの底に
今なお、こびりついている。
厚さ数ミリの上澄みに
到達させるまでもなく
右手のストロー
せわしなく、攪拌。
グラスの表面
浮かび上がった水滴。
わざとらしく、ぬぐった指先。
転がったのは
気化を拒み続けた、球状の意気地。
融けかけの氷と一緒に
奥歯で軽く噛んでみたら
あんまり簡単に
粉々になってしまうから
もう一度だけ
誰かに
泣いてもいいって
言われたかった。
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突然、強い雨
肌に吸いつくワンピース
こめかみから顎へと
転がる滴
汗よりも
涙よりも
はるかに当り前で
無防備だった
指先の感覚
あなたで確かめたくて
いつまでも
触れていたかった
けれど
こんなに雨を抱きしめた、今
あなたを汚したくはない
「そのままこれが
最後のわがままになりますように。」
「ウソは嫌い」
言った数だけ
私が嘘つき
気持ち
言葉にする度にね
1oずつ
ウソに近付いてく気がするから
なるべく笑顔
に
一言、重ねる
(−−−−元気?)
きこえはじめた雷鳴は
きっとこの雨の、
終わりのサイン。
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背中でもつれた 2枚の翼
まるで 不格好な蝶々結び
その姿に はじけるように笑った
外は にわか雨
水滴も 弾けないものだから
背中ばかりが 重たくなって
いつか全てが
潰れてしまわないように
気が付けば
雨宿りばかりの僕だった
光が射すと
南南東に向かって 飛び出して
「もっと暖かい場所は どこ?」
気持ちさえ温めておけば
どこまでも 上昇できるの?
別に 太陽が恋しいわけじゃなく
ただ 君に近づきたいだけだから
寝苦しい夜に
シーツの端っこ握りしめ
何度も寝返りうっては
変わらない平熱 まとい続けて
身体が どこまでも冷静だから
尚更 息が苦しくなって
1人ぼっちが怖いのに
気が付けば
孤独にさえも 甘えてた
吹き抜ける春風は
なぜだか今日も よそよそしくて
それでも
雨宿りの背中を引き剥がし
蝶々結びと一緒に
振り解いてくれる
そんな気さえ、するんだよ
君に届けたい 無数の気持ち
花びら1枚、1枚に乗せてみるから
どうか 明日の先まで運んで行って
置き去りにするくらいなら
どこか遠くへ
飛ばされたいから
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ありがとう。
一人で呟いても
仕方がなかった
雨上がりの
水たまり
下を向いて 零した言葉は
一滴の跳ね上がりにもなりきれず
まして
靴下を濡らすこともなく
だから、ありがとう。
いつも僕に
こう言わせてくれた 君だったから
あらためて 伝えたいんだ
色んなありがとうを、
『ありがとう。』
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ガラスの小瓶
右手の平 凹凸食い込ませ
逆時計回り
お腹に力を込める
カポン
突き抜ける音
広がる甘ったるい香り
鼻腔を走り抜ける
それでも もうね
単純な甘さだけじゃあ
ちゃんと歓べない体質なの
徒に 強いだけの酸味より
随分マシだとしてもね
強い刺激なんて今はもう
目頭にくるだけだから
だけど 涙も出せないから
分かってる
ちゃんと学習したでしょう?
Teaスプーン
指がギトギトになるくらいに
突き立てて
その割りに
ちょっと遠慮がちに掬い取った
もったいぶって 一口味見
しっかり煮詰められ
加工されてしまったあなたと違い
私はといえば
狂おしいくらいに
生身の人間
痛点だって
こうしてちゃんと生きてるの
何かに振り回されて
懸命に 遠心力に抗ってしまったおかげで
三半規管までも やられちゃった
見た目より
随分美味しかったあなた
しばらく一緒にいようよ
ちゃんと毎日 愛してあげるから
最後の一口まで
味覚だけで 愛してあげるから
痛いことなんて何もない
将来私の
一部になってくれればね
私はベッドで
あなたは冷蔵庫の中で、おやすみなさい。
互いにいい夢 見ていこうよ
いちじくJAM250g
590円也。
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形あるもの
いつかは壊れてゆくのなら
形さえも成し得なかった
君と僕との繋がりだったから
壊れる痛み
知らずにすんだって
たったこれだけのことが
せめてもの 僕の強がり。
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引出しの中
しまい込んだ
たくさんのテスト用紙
合計点数をはじきだしたなら
それが今の僕かな?
今頃になって
虫眼鏡で覗いた僕らは
あの頃いつも
右往左往の迷子だった
頭の中で
増え過ぎてしまった
難解な公式
まとめて
くずかごへ投げ入れる
バラバラバラ
そのあまりにも
ありきたりな音に
なぜだか僕は
どぎまぎとした
あれが
今の僕を凝縮した音なんだって
そんな気がして
急に切なくなったんだ
斜めに見上げた世界
額にかかった前髪
視界の端っこで
偶然拾った太陽が
しつこい緑の残像となって
僕の瞼に食い下がる
これから消えゆく細胞は
記憶の残像乗せたまま
まるで紙ヒコーキみたいに
あっちの窓から旅立った
ああ
晴れたり曇ったり
繰り返すのは
あの雲の仕業なんだって
今さらようやく気付いたよ
僕らの手には負えないもの
こんなにたくさん
あるってことも
水蒸気
雲へと変わるあの地点
僕から剥がれた
糸くずみたいなカケラたち
雲に変わることも
雨を生み出す力もないけれど
そのうちいつか
太陽の悪戯に肖って
あの虹の七色の
一部になれればそれでいい
そんな風に
願ってみた
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僕の足跡は
さっき波がさらってしまったから
僕が吐き出した二酸化炭素は
さっき光合成されてしまったから
さっき僕についてしまった傷なんて
きっと明日という日が
かさぶたに変えてくれるだろうから