詩人:三歩 | [投票][編集] |
「風をつかむのは簡単で
ただ手を伸ばせば
きっとそれだけですむこと。
風の本質だなんて
そんなことは知らないけれど。」
心の空洞に
暖かい風が流れ込んだなら
それで全てが埋め尽くされる
そんな錯覚で
僕はこれまで
むやみに風を追いかけた
だけど風の足首は
思ったよりも ずっと向こうだった
移動性高気圧
砂埃に紛れて
僕の心拍までも巻き上げる
カーナビも
方位磁石もいらない世界で
僕はただ
その場でゆっくりしゃがみこんだ
手が届かないと知ったから
この手の持って行き先が分からなくて
せめてこの両手
指を絡めて
しっかり祈るよ
誰かお願い
風の棲み家を教えてよ
詩人:三歩 | [投票][編集] |
それは僕が魚だった頃
浮力と潮に誘われて
やっと辿り着いた
君のいる暖かい場所
君がまぶしくて
呼吸すら上手くできなくて
壊れた回遊魚のように
君の周りを彷徨った
遥か遠く
水面の向こう側
満天の星空に願いをこめて
いつか君と一緒に
あの星空を泳いでみたいなと
カシオペアを横切って
満月に照らされて
やがて宙の磁力につぶされて
僕はただの星屑と化し
いつか
一筋の流れ星となって
君の願い、受け止めてみたい。
詩人:三歩 | [投票][編集] |
ベルガモットの自己主張
湿った香に照らされて
愛着してる Stillと張り合う
透き通った赤色は
まるで昨日の太陽みたいに
協調性に欠け
そこだけポツンと浮いている
心の鍵は
簡単に外れてしまった
気だるそうにぶら下がる
緩めに巻いた 伸ばしかけの髪
いくつかのmustと絡み合って
かき上げる手さえ覚束ない
頭を振って
払い落とすことができるのは
鎖骨にかかった 横髪だけ
心の鍵 外れても
飛び出す先を 持たなくて
向かった先は このティーカップ
シュガーポットはいらないけれど
せめて自分の甘さ
一さじ分くらいは
そのまま溶けちゃえ。
詩人:三歩 | [投票][編集] |
コースロープと水しぶきの間
たった25mの往復に
未だゴールを見出せず
気付けばもう
どれだけ泳いだんだっけ
不器用な僕は
立ち止まることにすら
罪悪感を覚え
迷いの気持ちはいったん
バタ足で底へ沈めて
右肘と水面で囲い込んだ
クロールの2等辺3角形
いびつな窓から
現在進行形だけを飲み込んでいる
塩素と抵抗だらけの中で
たった25mの往復に
相も変わらずゴールはないけれど
不器用な僕は
迷いの気持ちに
時々足をとられながら
次のターンに
その都度
小さなゴールを
かみしめてみようか。
「ため息だなんて言わないで、
これもただの 息継ぎだから。」
MINNA1231
詩人:三歩 | [投票][編集] |
たとえ
ダイヤモンドのような
強度はなくっても
信じることで
跳ね返す光には
違いはないんだって
ちゃんと気付くことが
できるから
偽物なんかじゃない、
ホンモノの ガラス玉。
詩人:三歩 | [投票][編集] |
街の明かりが溶け始めた頃
僕は暗闇に追いつけなくって
どうやって家に帰ろうか
いつもそればかりを
考えてしまう
飲み歩くサラリーマンの群れは
きっと 今日で一番の笑顔と饒舌で
僕の背中を後押しし
歩幅を大きくさせる
「やっとみつけた」
バスストップにしがみつく
街の明かりは
星のない夜空ばかりを強調して
それでもつぶやく
「今日の日よ、
永遠にさよなら」
明日を探すのにも
昨日を振り返るのにも
今日という一日が
あまりにいつも未完成で
僕はまだ
そのどちらのタイミングさえも
掴みきれずに
分かったような顔して
歯磨きしながら
今日も生きてる
詩人:三歩 | [投票][編集] |
雪の匂いは
ほんのり甘い
浅い深呼吸
夕焼け空
肺の粘膜に
クレープ生地みたく
薄く伸ばして貼りつける
西陽のシャワー
雪の表面乱反射
流れてくる
煮魚の香り
細長い風の中
先細りの
たよりない風となって
家路へ急ぐ
僕にまとわりつく
my dearest T city
おじいちゃん、おばあちゃん。
こっちは雪が降らないよ。