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蛍の部屋


[86] 「天国での会話」
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僕の身体(カラダ)は小さいけれど僕の親友はいつも僕を抱き上げ優しくなでてくれる。
昼間はほとんどお留守番。
淋しくなんかないよ。淋しくなんかない。
必ず帰ってきてくれるから。

小さなダンボール。噛まれた傷口から流れだす赤い血。
その小さな小さな身体はブルブル震え、雨と一緒に涙を流し
鳴いて助けてもらう事すら忘れてただ、ただ自分が映ってる水たまり見てた。
 
一人の少年が僕の目の前に現われて僕を抱き上げこう言ったんだ。「自分で声ださなきゃ誰もわかってくれないよ。あきらめちゃダメだよ。」と。
瞳から雨流してた。
その少年はそれから僕といつも一緒にいてくれた。
外に冒険しに行って虫くんたち連れて帰って怒られた時もあった。それでも一緒に寝てくれた。

遥か、遥か昔の話さ。

そしてそれから何十年という月日が流れてね、今日はやけにいい天気だなぁと思ったんだ。
少年は彼女と出掛けていてね、僕は一人だった。
ひだまりがとても暖かくてね、なんだかまぶたが重たくなったんだ。目を閉じるとそこには僕と少年が映ってた。
僕達二人の生活が心地よい風とやわらかい香りと一緒に流れていったんだ。
しばらくしてやっと目が開けたと思ったら、なぜだかいつもは僕が上を見上げると少年がいたのに
少年は上の方をずっと見て何か探しているみたいだった。
僕は上から必死に「ここにいるよ!こっち見て!」と叫んでいるのに少年は気付いてくれなかった。確かその時も少年は瞳から雨流してた。

それで僕は気付いたのさ。

淋しくなんかないよ。淋しくなんかない。
遠い場所でも少年を見てられる。その「少年」というのが僕の親友さ。
君の親友はどんな人?


僕はいつも親友に「元気」と呼ばれていたんだ。
「あの日出会った時君から元気をもらったからだよ。」ってね。

2005/10/28 (Fri)

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