寒水石を撒いたようなしんと張った朝を踏みつけるときその音は確かに、あたしだけのものになっているのだけれど柔らかな雪が肩に濃淡をつけて立ち止まってしまいたい、のに、振り向く前に外灯を消されたことに気がついて慌てて、睫毛にかかる雫を払うじっとこらえてきた思いは、吐く息の白さにまぎらせて伝えられると、思った。袖がじっと重くなるのを見てられなくて逃げ出すように、今日も、また足音だけを響かせる、帰路
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