詩人:min | [投票][得票][編集] |
枝垂れ桜の梢が
紅く疼いては
川面をついばんでいる
硬質な水に波紋
停車場のブリキが
とたん、とたん、音たてるのを
シャツの背中たなびく風に
じっとみていた
頬を伝い垂直をなぞって落とした呟きは
規則的な輪を
ひろげ、ひろげ
淡水のあわを連れてやがて海へ
紺碧のボンネット、轟音と
あいたい、の海鳴り
ね、君には
どちらが先に聞こえる、
水底から逆さまに見上げる空は
きっとカレイドスコープみたいだから、って
そんなゆめばかり
日向を吸いこんだ
濃紺のシートに沈みながら
さっき購った缶コーヒーを
置いてけぼりにしたことや、
ずっと回送バスに
手を上げていたことなんかを
思い出して、
ぺたん、窓ガラスに
ひたいをぶつける。
白く曇った処へ
ひとさしゆびで、つい、と
掻くのは
名前だったりも、する
その向こうでは
木蓮の蕾が
白い孵化
いちばん高い枝から
羽、やわらかくして
少しの身震い
古いレコードのような
羽音がきこえたら
いっせいに
飛びたちます
みんな、みんな
海へ向かう、のね、
春のお迎え
夢と現の境目がわからなくなった頃、
南西の風がながれこむ
この匂いをあたしは、知っている