詩人:min | [投票][得票][編集] |
晧々、繋ぐ道
くしゃりくしゃなり
草いきれに隠れて耳を当て、浅緑を喰む羊の腹にもたれかかる。いつしか眠りに落ちた(ぼくはこの匂いを識っている
立ち上がり、方々の出口へ連なる人々の声、こえ。に目を覚ました。眼前ではエンドロールが繰られ四方の電球が場内を次第に鮮明にする。声、こえ。おおきな長方形に、磨りガラスみたいな痺れを見た。リールを巻く規則的な音に、ふたたび目を閉じる(からっぽの、からくり、からっぽの、からっかぜ
水車が夕陽を撹拌していて、思わず耳を塞ぐ。ゆっくり顔を上げると、点灯夫と目が合った。羊が春を喰うてしまうのです、口唇の動きはそう言っているような気がした。浅紺の天鵞絨が羊の腹には巣くっている、だからこうして、灯を点すのだと。(ぼくは、ぽっかりとした羊の中で、胃のかたちになる(スクリーンが水車の影を映している
浅緑に突っ伏していたので涙に融けた草草はべったりと張り付いてしまった。春をやり過ごすためにぼくは羊を連れて眠る。
晧々、連なる灯