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イデアの部屋


[8] 病影
詩人:イデア [投票][得票][編集]

 夢を見る。
 灰色のアスファルト
 夏の陽射し
 私は芋虫で、やけに熱い地面を這っている。
 どこに向かっているのか なぜ向かっているのか それは知らない。
 目的は、しかし確かにある。
 なぜか分からずとも私は必ずそこに行かなくてはならない。どことも分からぬそこに。

 目が醒める。私は泣いている。
 なぜ泣いているのか 何に泣いているのか それは分からない。
 私は私であり、眼前に翳した手は芋虫の形をしていない。
 朝日が射す。
 目覚ましが出社までの刻を数える。
 やるせなさが肩と胸とを柔らかく押さえ込み、やがてゆるりと悲しみに変わる。喉を刺す。嗚咽に変わる。ああ、そうかーーー

 そうか 私は芋虫なのだ

 向かう先も理由も見えぬまま、もぞりもぞりと突き進む、あの芋虫なのだ。
 夢と現実がない交ぜになって私をかき混ぜる。
 朝日が眩しい。影が貼り付く。
 一日が、始まる。

2016/01/29 (Fri)

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