詩人:黒夢 | [投票][編集] |
故意に無機質な日々を重ねて。
君と過ごした日々を
確かに在ったものとして記憶に刻もうとする僕を
人は笑うだろうか。
時間を無駄にしていると、叱るだろうか。
今を大事に生きろと
過ぎた時間はもう戻ってこないと
そんな簡単なこと僕自身がよく知っている。
それでも
割り切れるわけがない。
だから僕は
君が無い今を色無き世界にして
君が居た過去を鮮やかな色で染め続ける。
それが全く意味を成さないことだとしても
僕は記憶の中で時間を遡り
君に会いに行く。
最後に行き着く先に、変わらない君がいれば
きっと僕はあまりにも簡単に
今を捨ててしまえるだろう。
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涙を流すほど悔しい夜も。
空を真似た狭い天井に伸ばした手も。
君の頬を伝った涙も。
それを拭ったこの指も。
全てが過去に消えてゆくけれど。
僕等には生きていく上で背負うリスクがある。
それはきっと、忘れること。
どれほどに大切なものでも
僕等はいつかその存在を忘れてしまうだろう。
記憶の片隅にその残像を鮮やかに残して。
あの日の僕を形成していた強く脆い想いが
きっと今の僕を迷わせる。
誰かに焦がれること。
誰かを想うこと。
きっといつの日も僕は繰り返すだろう。
消えゆく過去は未来に
小さな鈍い痛みだけを預けて。
消えていく今。
それでも見えない明日。
刹那のこの想いを ただ 抱きしめていたい。
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目の前にいる家族を
殴り飛ばしたくなった。
片付けることなく溜まっていた本の山を
崩したくなった。
どうでもいい事に酷く苛つくんだ。
負の思いに支配されたこの眸を映す鏡を
割ってしまいたい。
意味も無く身体を傷つけてしまいたい。
俺を非難する声を掻き消す為に流す
大音量の音の洪水。
そこに 癒しも安堵もありはしないさ。
唯、虚しくこの心を乱すだけ。
唯、沸き上がる激情を抑える術にすぎないよ。
取り乱すわけにはいかないんだ。
俺の精神を正常の範囲に保っているのは
情けないことにやたらと高いプライド。
蜘蛛の糸の様な 細い 細い 理性。
もう少ししたらいつも通りに笑えるようになるさ。
こんな思いは一時的なものだから。
心の中でそんな馬鹿な自分を嘲笑うんだ。
もう俺は二度と脱出できないくらいの
深く 暗い 繰り返しばかりの
複雑な輪の中に入ってしまっている。
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僕は何も持っていない。
君を守る力も
君を幸せにする権力も財産も。
それでも
君は言ってくれた。
この手が何よりも温かいと。
気の利いた言葉が無い代わり
僕はこの両手で
ありったけの温もりを君に伝えよう。
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『好きです』
口にするだけで、まだ胸が痛む。
思い出だって関係だって
会えなくなったと知った時、忘れたつもりでいた。
人伝に話を聞くだけで、その名を口にするだけで
蘇る、懐かしい思い出。
脳裏をよぎる、愛しい面影。
『元気ですか?』
『新しい生活はどうですか?』
『まだ私の事、覚えてくれていますか?』
忘れたつもりで蓋をした、哀しく安堵する想い。
想うだけで満たされていたあの日。
話をしただけで喜んだあの時。
今は互いの距離がどれだけ遠いかさえも
分からなくなってしまった。
募る想いにひたすら気付かないフリをしている。
怖いから。
隠した想いに気づいてしまうのが。
隠し続けたい。
駄目になってしまいそうなんだ。
このまま君を忘れたフリを続けたら。
君に好きだと伝えたい。
消える事ない想いを消そうとする心と
それを拒もうとする、矛盾した心。
思い出の中の君の笑顔でさえ
複雑な心情に邪魔されて
ぼやけて見えるよ。
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揺れる意識。
頭が考えることを拒否する。
耳に届く穏やかな波の音。
このまま目を閉じれば、君が見えるかもしれない。
水というガラスを透して見た、歪んだ太陽。
零れ落ちていく水を、この想いと共に
すくい上げることができたら。
流れるままに、波に身を委ねていれば
君の元に辿り着くだろうか。
命の還る場所と言われるその場所に
僕も
長く短い『生』を全うした後
還って来たい。
そして
ようやく君の手を掴むんだ。
全ての命が還ってくるその限り無い海原で
僕等が
僕と君の魂が
もう一度、出逢えることを
切に願う。
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星が囁く、声が消える。
夜は続く、月が笑う。
闇に手を伸ばせば
僕は音もなく消えていく。
少しでも此処に在ると言いたくて
僕は歌う。
誰かに届けようとは思わない。
少しだけでいい。
少しだけ音の無い闇の中に
この声を響かせてみたいだけ。
声が生まれる、星が消える。
太陽が輝く、朝が始まる。
また、夜が訪れるまで
僕は眠る。
僕は夜を愛す。
そして
僕は夜の闇の中で、歌い続ける。
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風が吹いた。
僕の背中を強く押す。
耳に届いた声。
その唇がつむぐ言の葉。
僕にだけ吹くその風はきっと。
風に身をゆだねる。
風に声を重ねて。
遠く
そして、誰よりも近い場所で笑う君に。
『ありがとう』と。
せめてこの言葉だけ
伝われば良い。
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ホントは、本当は
伝えたい想いで溢れていたよ。
ただ、捨てたくない言葉がたくさんあったよ。
それでも、全部隠して私は笑うよ。
きっと、これからも私を苦しめるだろうね。
胸を締め付ける理由なんてすぐ解るよ。
出かけた言葉を必死になって抑えたあの日。
持っているものなんて何一つ無いよ。
無いはずだから、涙は流さない。
何も知らないフリをして
時間だけが私を傷つける中で
心の伴わない笑顔で貴方と笑うよ。
私は、自分が信じた想いを裏切った。
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聞きたくない言葉なら
幼い子供のように耳を塞げば良い。
それでも
その声が貴方だから。
貴方の言葉は優しいものと信じていたから
私は何の躊躇いもなく
貴方からの別れの言葉をすんなりと
耳に入れていた。