詩人:黒夢 | [投票][編集] |
互いにさよならを言って背を向けた。
君は何処かへ走っていく。
僕ではない誰かの所へ。
君の靴音が僕の耳に届かなくなっても
僕はただその場所に立っていた。
君が幸せであれば。
そう言って、君の背中を押したフリをした。
そんなにいい奴じゃないのに
無理して、限界まで我慢して。
君の好むいい奴を、演じていたんだ。
最後の最後まで、本当の僕を見せないで。
ピエロみたいだろ。
笑顔の仮面を貼り付けた、哀しいピエロ。
でも、そんな自嘲気味なことを考えたって
本当は君の笑顔を望んでいて
やっぱり君に幸せになってほしいよ。
これから僕等は、沢山の季節をめぐる。
僕も君も、それぞれの道を歩みながら
夢へと向かっていくんだ。
夢へと走る君の隣に、僕も居たかった。
あの日言えなかったこの言葉を。
届くはずないと知っているから、だからこそ
この場所から君に
愛していた、と言おう。
過去形にしたって今も続くこの想いを。
二度と伝わらない、愛の言葉を。
ゆっくりと歩き出した先に
君の姿はもうないけれど。
もう少しすれば、いい思い出にできるはずだから。
君が僕の側から居なくなってからしばらくたって。
僕は初めて他の誰かの幸せを、心から祈っていた。