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黒夢の部屋


[47] 最後まで
詩人:黒夢 [投票][編集]

くだらないプライド保ったまま
貴方との距離を縮めていった。
それが間違いだったということに
最後の最後まで気付くことのなかった愚かな私。

馬鹿みたいね。
今更貴方が恋しいなんて素直になって。

全て今更なのに。
貴方を愛しいと思うことも。
貴方に会いたいと願うことも。

素直になれない自分がもどかしかったわ。
憎まれ口を叩く自分が悲しかったわ。
それ程に
貴方が好きだった。

別れの時も私はいつも通りの私でいた。
貴方がいつも通りに微笑んでくれるのを待って。

でもあの日は違った。

貴方は真剣に私を見て
『だからお前は好きだったよ』
そう言った。

最高の殺し文句。
もう駄目なのね。
そう思って
私は【貴方の好きな私】を演じて舞台をおりた。

貴方は笑った。
いつもと同じ微笑みを浮かべて。

私は最後まで貴方に『好き』とは言わなかった。
『愛してる』だって言ってはいなかった。
貴方の誕生日のあの日
プライドを捨てて言ってみようと思ったの。

最後まで言えなかった貴方への言葉。
最後まで捨てる勇気がなかった私のプライド。

あの日私が泣いて貴方を止めたのなら
今の現実は変わっていたかしら。

『さよなら』
最後の言葉はこれにしておくわ。

『愛してる』だなんて
口が裂けても言えないもの。

私は
何よりもプライドの高い女だってことに気付いたから。

今更になって
それを捨てる気にはならないの。

2005/01/30 (Sun)

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