詩人:浜崎 智幸 | [投票][編集] |
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いつもとよく似た 朝がまた来たね
今は会えない人に 歌うつもりでいた
小さな音符が てのひらに残る
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みどりの表紙の 読まずにいる本(詩集)
今は言えない人に 歌うつもりでいた
小さな休符が ゆびさきに残る
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調律してない がっこう(小学校)のピアノ
今も消えない心 歌うつもりでいた
小さな旋律 くちびるに残る
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風の通る道を一人見てた
幸ある人たちのギターを聞いた
すべて光に似た価値あるもの
過ちさえ消えた世界のもの
響きあう心で いつまでも愛そう
たったいちど たったひとり
僕のリーセル
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風の強い朝はどこに行こう
霜のついた窓に何を見よう
感じたまま遊ぶ子どものような
素直な心なら届くだろうか
嘘のない態度で いつまでも愛そう
たったいちど たったひとり
僕のリーセル
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リーセル……高校時代の先輩につけた愛称。今となっては語源は不明だが、luce(光)と関連があると思われる。
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懐かしい歌を歌ってくれなくていい
ありふれた優しい笑顔で応えてほしい
僕はまだ弱いよ。
滑(すべ)らかにはなれないで
乾かない涙を日だまりのなか
わざと落とした。
ありがとう──
あなたの瑠璃光に
僕は包まれているよ
ありがとう──
慈悲とその功徳が
この世界に溢れ出す
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清潔な願い 見返りを求めぬ愛
忘れないうちに書きとめられた出来事
歌はまだ続くよ。
飽きることのないように
痛みから生まれた心はそっと
奇蹟を起こす。
ありがとう──
あなたの寂光(じゃっこう)に
僕は包まれているよ
ありがとう──
知恵とその散華(さんげ)が
この世界に溢れ出す
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道はまだ続くよ。
すべての国を通るよ
許しあい 励まし
ひとつになれる
教えを運ぶ。
ありがとう──
あなたの瑞光を
誰もが見上げているよ
ありがとう──
歌頌(かじゅ)とその伎楽(ぎがく)が
この世界に溢れ出す
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瑠璃光……薬師如来の別名だが、ここでは安らぎの光といったところ。
寂光………極楽を常寂光土ともいうが、ここでは希望の光といったところ。
瑞光………仏の出世(現世への来臨)を告げる光。
歌頌………カンタータ。
伎楽………オラトリオ。
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君の白いブラウスが寒そう 夏の日の図書館
小説の本棚の前から ずっと動かないね
──何を探してるの?
──恋愛のカタログ?
見つかるよ 君なら
純粋だけど弱くない
君の意志の瞳の正しさを 僕も真似てみよう
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少しきつくウェストを絞った 紺のスカートから
貸出しのカードを取り出して カウンターに置いた
──二週間有効の
──恋愛のテキスト
小さめの活字の
ちからを君は確かめる
君が読んだ世界のひろがりを 愛が満たすだろう
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この曲の失敗……タイトルが早口言葉になってしまったこと。
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土砂降りのなかへ
吸い込まれていくことで
すべての悲しみ
捨て去る人だった
幸せなど見せかけだと
私の肌触れもしなかった
Passanger in the midnight
卑怯な微笑みも
Passanger in the midnight
優しい裏切りも
すべて抱きとめるから
Passanger
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やりたいことだけ
できるならばいいのにねと
私の言葉に
くもった瞳伏せた
幸せなら君がそうだと
舌足らずに言葉濁してた
Passanger in the midnight
未熟な欲望も
Passanger in the midnight
不当な抑圧も
すべて許せるならば
Passanger
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白い鳩が 闇を裂いて
眠り深い街をよぎる
黙ってられるほど
私は強くない
手紙の重さは
私も知っている
誰も手紙 脚に巻いた
影をもって生まれ 滅ぶ
言葉にできるなら
あなたもわかるのに
風吹け 風鳴れ
私の味方なら
(鳥は闇の中で目か利くのか……細かいことは考えないでください)
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出来屋敷公園へ続く坂道を行けば
どんな悲しみだって心をすり抜けていく
水源地のあたりは蛍が橋を渡る
時計も遅くまわる
生まれてきてよかったよ
あなたに会えたときの喜び繰り返すために
歌を歌う
光があふれ世界の形見えなくしても
歌声は続くよ
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※「ほんごうちワルツ」と読む。
※水源池ではない。水源地で正しい。
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あらかぶは釣れますか
この海は豊かですか
この海がいつまでもまほらなように
祈ります
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舟霊はおりますか
この海は平らですか
この海がいつまでもやすらなように
祈ります
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●あらかぶ……カサゴという魚の方言名
●まほら……真秀と書く。
●やすら……憩らと書く(造語)
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生まれ変わるというのは こんな気持ちなんだろう
目を閉じたら 邪魔なものが飛び去っていくようだ
風そよぐ照葉樹の森へ昼寝をしにおいで
小さな草 優しい鳥 日射しも君を待つ
明るい昼間は 雲母(きらら)が降る森にいます
ここで待っています
心だけで届くから 何の心配もいらない
森へおいで 森へおいで 眠たくなる森へ
心より広い森を君は信じないだろう
森に溶ける心地よさを まだ知らないうちは
まぶしい初夏には 辰砂(しんしゃ)を生む森にいます
ここで呼んでいます
生まれ変わるというのは こんな気持ちなんだろう
目を閉じたら 邪魔なものが飛び去っていくようだ
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こころはいつも嘘を
重ね着して強くなる
逃れられないならば
何度でも歌う
虹をくぐる鳥よ
滝を飛び越す鮎よ
その閉じた瞳(め)で
わたしのために泣いて
海を渡る蝶よ
闇を恐れぬ蝉よ
その触角で
わたしの歌を聞いて
懐かしい歌だといいね
記憶を閉じた螺旋を
刃物よりも恐れてる
冬に蒔かれた種は
契りを疑う
毒を抱いた草よ
友をなくした猿よ
その憎しみで
わたしの爪をなめて
過去を運ぶ蟻よ
枝を捨てた鳩よ ※
その醒めた目で
わたしのからだを見て
あんまり美しくないね
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※ノアの洪水の伝説に拠る。