詩人:カクレクマノミ | [投票][編集] |
表情すら
吐く言葉さえ曇ってきた
月はこんなにも綺麗なのに
星も輝いているというのに
僕は忘れ物が多い
戻って取ってこれるものなら
すぐに走って取ってこれるだろう
いつしか目を瞑って他の物で目くらまし
見えていない
見えていないと自己暗示の日々
忘れた
忘れたと言って一刻逃れる
本当は全部覚えている
細部に至るまで詳細に
成長は疾うの昔に止まっていて
止めたのは自分だと知っている
諦めた自分を肯定して逃げた
胃液を全部吐き出すようには上手くいかなくて
本当は毎日声が枯れるまで叫び続けたかった
喉元から頸動脈まで貫いて思考を止めたかった
けれど違かった
それは違かった
目で追えないほどに可能性は転がっていて
手を差し伸べてくれる人たちだっていた
もう逃げることに疲れた
言葉すらままならない程に戦ってみようと思う
ここからは僕と戦ってみようと思う
二度とは負けない
捨ててはいけない
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ひとつあげるからふたつ頂戴
憤りの先にはただの空間
これが良い、あれは悪いと漏れてく空気
決断の指針さえイカサマの賽
手のひらの上で遊んでいるようなもの
そんなようなもの
振り返った君はよくできた人間
振り返ることを禁忌とする水槽は丈夫な作りさね
でもよく見ると小さい穴が空いてる
気づいた君はよくできた人間
賽の振り手は杞憂ではすまなくなった
足の先にぶつかる小石は確かにそこにある
そこにあるんだよ
金魚鉢の中で横たわった金魚は何処へ
底のない瓶の中の水は何処へ
ぐるぐる廻っても結局は振り手の出目を待つか
空気中に解け出した感情をそのまま受け取るか
それは自分で決めることだよ
君が決めることだよ
何かが変わったようで本当は何も変わってない不思議な水槽
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ホントはね
何もないんだよ
実はね
意味はないんだよ
意味は誤解して生まれた想像
意義は刷り込まれた価値観
それを知って初めて100%で生きられる
悲観してる暇なんて無い
死んでる暇なんてもっと無い
120年後の後悔はここにはあってはいけない
300年後の矛盾を作ってはいけない
僕が生きてることに意味は無い
君が生きてることにも意味は無い
誰かがいてくれるのは依存と義務かもね
けれど出会った人には感謝をしないとね
優しくしてくれた人にも感謝をしないとね
自分もみんなも気持ちよく生きられるようにしないとね
人生に理由付けをするのは大歓迎
意味を見つけるのは不可能
意味は後付けの理由や憶測や蛇足とは違う
知って楽しく生きよう日本人
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寒い季節を迎えると思い出す
この歳になっても思い出す
1999年のノストラダムスの予言は少しだけ僕をかすめていて
僕にとって地球より大切だった人が離れていった
僕はノストラダムスに全てをなすり付けて
他の人にとっては取るに足らない罪を着せた
もう13年も経って
僕ももうとっくに大人
そこに故意はなくて
あったのはいないという現実と漠然と積み上がった時間
口では時間が短いと言っていたのに
たまにつらくなったりしてた
気づけば鉛色の毎日の繰り返しにも慣れて
出来上がったその他大勢のエキストラの一人
失った諸々は忘れて
役に徹してたはずなのに
毎回夏が去ると思い出す
昔あった恋
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東京ではもう桜が咲いたという
僕の街はようやく新芽が出てきたところ
まだ少し寒い
春物の服はまだ早い
白鳥はまだ近くの池にたむろしていて
灯油を詰んだトラックもまだ走ってる
何十回もの冬を越えて
何十回もの春を迎えて
今の僕と見比べる
些か成長したかな
今年は始まったばかり
けれどすぐ終わるのでしょう
一年なんて神様のあくび
あくびをしている間に過ぎていく
つられてあくびをしないよう
一歩一歩踏みしめて歩きたいな
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冬の重りも過去の様
人それぞれ重い軽いはあるけれど
春には溶けてしまってる
瞬く間の一日が積もり
瞬く間に溶けていく
春夏秋冬の積荷は溶ける
冬には秋の積荷
夏には春の重荷
肩に残った荷物の余韻は
溶けるべきではない事の表れ
何が溶けるか
何を溶かすか
詮索してもやがては溶ける
把握の範疇はすぐに越えて
一瞬で積荷は過去の産物
余韻を大切にする人の中で
一人また一人と下ろしていく
コントロールは過剰な自信
分からないことを認めない
溶けた雪は溶けたことに気づかない
気づく間もない一瞬の出来事
美化の後の神格化
それもいずれは溶けてしまう
知っていても早めたい融解
そんな思いもすぐ溶ける
余韻だけでも残らないかと期待して
少し経てば溶けてしまってる
繰り返された果てに辿り着きたい春
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なんとなく産まれて
なんとなく育った
なんとなく飯喰って
なんとなく眠る
なんとなく人に優しくされて
なんとなく人に優しくする
なんとなく怒ってはなんとなく泣く
なんとなく生きてる
それで人
みんな同じ
なんとなく楽しんで
なんとなく悲しんで
なんとなくそろそろかなって時
なんとなく死んじゃうんだから
適当になんとなく生きてていいんだよ
詩人:カクレクマノミ | [投票][編集] |
非日常を思い描いても
つま先より頭の頂まで日常に浸かる
変革を望んで変色させた心はろくでもない日常を回す
早々に芽生えさせた感情は偶発的なものと錯覚
想像に力を加えただけのもの
唐突に口先を転がる薄っぺらい言葉は
往々に見つかる薄っぺらい僕
忘れたいことを春風に吹き飛ばしたつもりでも
初夏の風で舞い戻る
雪解けの川に流し捨てたつもりでも
波となって海岸に打ち寄せる
いつの季節も後悔と相対して
罪悪感をも取り込んだ記憶の一撃で膝から崩れ落ちる
いつの季節か完璧に溶けきってくださいますようにと願う
初夏の夜
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様々渡りて時の河
隠し隠され人の中
流れた先で露見する
薄く固い鉄の皮
叩く者は数多く
壊した者は無に等し
歩みを寄せた葉の中で
自身も葉だと気付かされ
流れ流され打ちつけた
葉先は疾うに丸い後悔
渡った先の葉っぱの溜まり場
一葉一葉去ってく港
残りの葉っぱは惰性か怠惰
それも悪くはないのかな
頭をよぎる一縷の過ち
葉は一様に暖かけり
一枚一枚思い出し
残りは何もしない後悔
淘汰されないことの苛立ち
悪は全て根のない葉っぱ
枯れて気付くは愚かな自身
皆暖かかったよありがとう
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青空に向かって僕は竹竿を立てなかった
それは未来のような今だった
決まっている長さを越えずに
そこまでだった
青空にも溶けなかった
決まっている長さを超えたかった
どこまでも
どこまでも青空に溶け出したかった
決まっている長さを超えたかった
どこまでも
どこまでも青空に溶け出したかった
青空の底には無限の歴史が昇華している
僕はそれに加わろうともしなかった
青空の底には永久の勝利はない
僕はそれを知っていた
青空に向かって僕は竹竿を立てなかった
それは未来のような今だった
決まっている長さを越えずに
そこまでだった
そこまでだと知っていた
残った願いは
放置した竹竿が横にでも伸びていれば、
と思う希望という名の浅ましさ