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あいるの部屋


[201] 平熱と呼吸
詩人:あいる [投票][得票][編集]

誰かボクを見ませんでしたか

拾ってくれた方には
謝礼にボクを一割あげます

いりませんか
そうですか


きっと、きっとそう


抱き合ったり
泣きあったりでしか
伝わらないはずの想いが


こんな簡単な音で
伝わるわけはないんだよ


ずるをした誰かが
短い言葉で
気持ちを表してしまった


瞬く間に大流行で

人が人で在るかぎり
流行語大賞


いつからか
嘘が生まれて


簡単な音は
価値をなくしました



どーしようもないくらいに
自分の心配ばかりしていたんだよ


困れば涙ってやつを流して


メーデー
ヘルプミー
エスオーエス


覚えたばかりの言葉で
助けを呼んでみた


これまた使い勝手がよくて

大勢の中で
孤独を知りました


命に上下関係はないのに
気がつけば競争の中


ジャンケンでも
あいこだけ出したい
優しい人は
すごろくを蹴飛ばして

自分を殺しました


冷え症の誰かは

温暖化の地球を
抱き締めました


同じ体温の地球


すごろくは
すぐにフリダシに戻る
もしくは後ろ向きに進む


君が何度か生まれ変わって

同じ人って形で
フリダシに戻ってきた



ボクはボクを
見つけてしまいました

とても近くにありました


お礼に
何か渡したいのだけれど

なにも持ってないんだよ


君は体温が低いので
分けてあげることにしました


何で四本足だったボクらが
二本足になったのか


きっと、きっとそうさ

君と並んで歩くためだよ


近寄れば
近寄るほど

見えなくなるものって何だ
見えてくるものって何だろ

なんだか
1人で生きてこれたのが
不思議だよ


きっと、きっと、


いま零れたのがボクで
想いで涙ってやつ

ボクの頬っぺを心を
いま拭ったのが君で
愛とゆーもの


やっと言葉って音を
脱ぎ捨てられるよ


ほらフリダシに戻った

ボクは誰でしょう
君は誰でしょう


同じ体温の二人

2008/01/30 (Wed)

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