詩人:和泉 | [投票][編集] |
仮定ばかりを繋げて
逃げ場を用意して
ラストなんて
まだ先だと
見え隠れする未来に
なに思うの
教科書に描かれたアート
持て余した時間を
黒で塗り潰して
輪の中の孤独
繋いだ手を離さないで
古びた教科書は
誰の目に触れることなく
本棚で今も眠っている
詩人:和泉 | [投票][編集] |
口に広がる苦み
かさかさの唇から漏れる溜め息
ぼうっと
何かを見ているようで
見ていないようで
瞼を閉じれば
消えるはずの映像が
残像となって
そこにあって
唇を動かなきゃ
口を開(ひら)かなきゃ
聴こえないよ
君の声が
僕の声が
聴こえないね
溜め息ばかりが充満する部屋
空気は最悪
窓を開けて換気をしましょう
溜め息が消えたなら
君の声を聴くよ
空気を震わせて
空気を波打たせて
さあ
僕の声を聴いて
詩人:和泉 | [投票][編集] |
とがった手じゃ
君と握手出来ないね
君と繋がらないね
鋭利な言葉は
あなたを傷付けるだけね
私を嫌いになるでしょう?
攻撃じゃない
防御だった
自分を守る行為が
あの子を遠ざけるとは思わなかったの
目指したのは丸
柔らかな
温かな
全てを包み込む丸
詩人:和泉 | [投票][編集] |
ふりだしに戻ったとしても
あの頃が帰ってくるわけじゃないことぐらい
知ってたよ
ないものねだり?
サイコロを何処になげても
1ばかり
モザイクがかった記憶
ピントが合わない映像
ボヤけた視界
寝起きは
瞼が重すぎる
詩人:和泉 | [投票][編集] |
まやかしの月に潜むウサギは地上に降りてはこない
地上から見る夜空
黒に捕まりそうな闇
広く高い天井だから
息苦しくはない
足元に散らばる星は
空から降ってきた子たち
お家に帰してあげたいけれど
ごめんね
空には届かない
だから
部屋を暗くしてカーテンに飾ろう
夜の篭の中の三日月パン
あのベッドで眠りましょう
詩人:和泉 | [投票][編集] |
固い地面に足が悲鳴を上げる
よく此処まで歩いてきた と
自分を甘やかして
本当は
止めてもいいんだって
自分が選んだなら
止めてもいいんだって
けれど僕を置いて皆が歩いていくから
十歩後ろから背中を眺め
ゆっくり歩く
目的がない旅に
足が泣き叫ぶ
丁度良いベンチは塗り立てで
丁度良い芝生はびしょ濡れで
早く見つかるといい
此処にいたいと思える場所
それまで僕は
歩き続ける
詩人:和泉 | [投票][編集] |
過ぎ去る今日が怖い
戻らない昨日が怖い
迫り来る明日が怖い
あっという間に過ぎてしまう時間(とき)が惜しい
与えられた時間
上手く使えたならいいのに
嗚呼
今日ももう終わる
詩人:和泉 | [投票][編集] |
目隠しをされたのか
自ら閉ざしたのか
それさえ忘れた霧の中
白いもやに溶けたくない と
飛込んでいった少年の姿さえ
もう見えない
辛うじて見える足元
汚れた靴は
固い地面を嫌がった
下ばかり眺めて
歩き続けて
更に
迷って
目隠しをしたのは誰
眼を閉じたのは自分
だんだんと
霧が濃くなり
5分前
濃霧注意報が
詩人:和泉 | [投票][編集] |
飲んだ台詞は
喉の奥に消えた
この舞台で
主役は僕のはずなのに
ライトアップされず
劇もまだ中盤で
長い 長い
劇に
終わりは見えない
生まれる前に
渡された台本は
真っ白で
鉛筆と消ゴムを
差し出され
“自分で造れ”と
舞台に押し出された
僕の台本は
まだ10ページにも満たなくて
けれど
ライトアップされるシーンが
いつか訪れる
だから
今日も僕は
舞台に立っているんだ