詩人:はるか | [投票][編集] |
いち、に、さん
片足でジャンプ
揺れてはねる前髪を
空気といっしょに
まきあげた
悲しいことは
悪いことじゃないから
うつむかなくて
いいんだよ
心は上へ
上昇気流の風を
よもう
加速つけて
スタートライン
引きなおしたら
もう
涙なんて
必要ないくらい
あげて、あげて
まきこんで
人も未来も
きっとこの手でって
いうくらい
たかく、たかく
息を吸って
詩人:はるか | [投票][編集] |
ふる ふる 冬の
いたずらに、雨
肩におちて
音がしずかに胸にふる
昨夜みた夢は
つめたい水の底
うすい膜
いちまい隔てて
とおい向こう岸
窓の雨つぶを
小さく丸でかこむと
ゆびさきが泣いた
はら はら 涙は
行きさきも知らずに
落ちていく
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静かな音楽に促され
焼香の匂いの染み付いた部屋を出る
出口には生前のスナップ写真が
家族という微笑みの輪の中で
刻んできた歳月と共に飾られていた
亡き人の暮らしぶりは
話でしか知らないが
人の生き様というものは
終わった後で見えてくるのかもしれないと
悼む声を聞きながら黙偲する
佳き日、悪しき日
平坦な道ばかり歩める訳もなく
身心を砕きつつ
それでも生きる
送る者、送られる者
今少しの思いはどちらが勝るとも言えず
心残りはなかったかと
ただ安ずるばかりだ
孝行したい時に親はなし
近頃、気弱な台詞の多くなった母が
被って見えた
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うっすらと積もった
タンスの上の綿ぼこり
一年ぶりのお目見えに
ゆるんだ気持ちが
かさなった
あんなに仲良かったのに
なかなか会えなくなった友達とか
一生懸命えらんだのに
しまったまま
どこかに失くしたプレゼントとか
置いてきて
そのままにした心たちが
一斉に飛びこんできて
瞬きと一緒にかけ巡る
どれだけの思いが
繰り返されただろう
少しずつ蓋をするように
見ないふりした
忘れた訳じゃ
ないのにね
気付けば胸に綿ぼこり
優しさが欲しくって
泣けた日
踏みにじって
もみくちゃにした昨日
気付いた今なら
失くし物、見つかるかもしれない
綿ぼこりの下の
大事な宝箱
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一つまた
風が変わってゆく
わずかな日だまりに
心を宿し
涙の張力がほどけて
泡になる
春だからと
言わないで下さい
どんな季節に
出会っても
私はあなたに
恋をした
詩人:はるか | [投票][編集] |
朝起きて
すとーぶを焚く
息が もう
ずいぶん白い
六人掛けのてーぶるに
静かな湯気が立ち込める
寝ぼけ眼の子雀の
覚束ない足どり
まな板のトントン拍子に合わせて
目をぱしぱしする
もう一羽、さらに一羽
息が増えていく
白いぬくもりが
目を覚ます
おはよ、
ごはんだよ
詩人:はるか | [投票][編集] |
放つ一言で
銀河も飛びこえた
気もち
好きな瞬間が
一緒でうれしい
待ってる間に
思い出し笑いの
種がふえるから
離れてることは
寂しいことじゃなくて
次また会うまでの
心をそだてる
大切な時間
詩人:はるか | [投票][編集] |
しゅるしゅると
剥かれる林檎のかわ
途切れないで
終わりまで行けるかだって
君の望みは日常の
へんてこな場所に
転がってる
でもちょっと
羨ましいかも
種が飛んでも
笑うんだろ
変色しないための
塩水なめて
顔をくしゃくしゃにした
林檎のかわは
二人分
君を見てる僕の心も
つないでくれる
詩人:はるか | [投票][編集] |
きみに感化され
見上げた空
あちこちから
思いが降ってくるって
しばらくあんぐり
眺めてみたけど
あたしには
無いみたいだ
強いとか
現実的とかじゃなくて
絡まったまま
先へ行けないから
そのつど ほぐして
じゃないと
あたしが
あたしでいられない
綺麗だね
底抜けにエアブルー
心は言葉に
追いつかないから
何だか
もったいないよ
詩人:はるか | [投票][編集] |
むせ返る匂いのもとに
ふと目を添わせば
こぼれ落ちるよな
それは それは
小さな花びらが
一心不乱に
我が身をゆらす
ああ 今頃だったかと
胸にひろがる思いに
手のひらをあて
見上げてみれば
夕日とともに
刻んだ風景までもが
匂いに導かれて
全身を包みこんだ
無事を知らせる
風もとどかない
この場所で
ほんの一瞬胸をかすめる
余韻のわけを
問うべきかどうかなど
そんな事さえ
迷う自分の
なんと
馬鹿げたことだと
ほほを緩ます
ある日の夕べ