詩人:はるか | [投票][得票][編集] |
「すいません!」
凜とした声に振り返る。目の前に居たのは、白い杖の女の子。
多くの人が行き交う場所で、一瞬私と彼女の周りにだけ空間が出来た。
杖の意味するところは
すぐに理解した。
「バス停はどこですか?」
少し躊躇した。言い訳を考えようとした。
どう接していいのか
うろたえる自分が情けないと思った。
中途半端な親切心。
私は彼女の肩を回し
「このまま真っ直ぐ、向こうの方へ…」 と、
自分の指で指し示した。
恥ずかしかった。
情けなかった。
なんて無知で愚かな自分であったろう。
確かに私は急いでいた。だが、それが彼女に何の関係がある。
私のした事は、彼女の声に気付きながらも
何食わぬ顔で通り過ぎた周りの人間達と
何ら変わりない。
人は生まれながらにして平等と、世の中は言う。本当にそうだろうか。
それとも、そう考える事こそ奢りだろうか。
出会いとは偶然か必然か少なくとも無意味なものにしない為に、記憶と共に彼女の後ろ姿を この目に焼き付ける。
そうして、生きたいと…私は思う。