時は止まることなくゆっくり流れていくすすり泣く声はどこか遠くて現実との境がうまく見つからない手入れの行き届いた庭は今年もやがて白い花が咲くだろうあなたが慈しんだものたちが今は静かに息をひそめて水面(みなも)の月を眺めてる薫る五月の風にのりあなたが運んだものは何だったかと思わず問いかけて口をつぐんだ言葉にするにはもどかしく留めておくにはしのびなくただ ただ冷えた腕をさすり有りし日の面影をなぞるだけなのです
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