詩人:Feeling | [投票][得票][編集] |
埃がかぶってた一本の線香花火に火をつける
今までこの線香花火だけは使わないでいた
いろんな夏があった
夏の夜
夜空に咲く花火よりこの小さな花火を愛した
今はもういない妻との青春の中でも
線香花火は僕らの頬を染めた
子供たちが幼かった頃も家族の絆として線香花火を囲んだ
子供たちがこの家を去っていってからは
この線香花火のゆらめきは失っていた
妻がこの世を離れてから
うすっぺらい人生を一人で辿ってきた
母の死を告げた線香花火
自分に近づいてくる妻と母の足音
それを聞いてこの線香花火に火をつけた
自分が歩いてきた人生(ミチ)を振り返ると何本の線香花火が輝いている
最後の線香花火はまぶしいくらいの輝きを見せて
命とともに消えさった
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