詩人:さみだれ | [投票][編集] |
生まれたばかりの雛鳥に
私は神様の話をする
成長し空を飛ぶようになった鳥は
神様を探し上昇する
私は「意味」を持たせた
持たずして生まれるべきそれを
鳥は懸命に行った
そして聖職者となった鳥は
私のもとへ帰ってくることなく
道路脇で死んだ
生まれたばかりの雛鳥の
無垢な目に似て空を仰ぎ
その生涯に「意味」を持たせて
私もまた同じに
神様、あなたもそうでしょ
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それは不意に押し寄せる
メランコリヤの影を縫う闇
旧支配者の衣を脱ぎ捨て
馳せ参ずる団らんの場
心を固く閉ざせばよいよ
瞼の裏にはいつだって優しい恋人が
腕を組み胸を押しあてるのだから
なんなら人を殺すよ
表現の自由のもとに!
気に入らない人間には触れず
私という人間を疎外させたときにこそ
あなたは真に人殺しとなる
「私は夜の女王となり
この地に君臨し 統治する
民は永遠に微笑み
願いは約束され成就する
誰一人こぼれることなく
幸せになれる苦しみを
星のもと誓おうではないか!」
手から不意に失われた
落日の天使がもつ羽の質感
往来の人々にはバレないだろう
今はもう気にもされない
喪失者の空虚とはなんたるか
未来に加圧されたのだ
行くことしかできない
目印に落としたパンくずが
小さなゴミになっていく
この喪失感こそが
夜の女王の課した唯一の条令であり
私が生きている間
見続けなければならない星なのだろう
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奇怪な音に合わせて踊る
大丈夫
あなたの心の中で、だから
それはエゴでもなく
総意でもないから
あなたは心地よく
恍惚とした面持ちでステップを踏める
その無様な足を
縛りつけでもしようものなら
あなたはきっと人間として生きてはいけないね
問いなよ
あなたの魂は何をもってあなたと成り得るのか
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月の光のもと
眠る少年を少女は見ていた
今日まで溢さずにいた涙や
後悔や寂しさや
それらをすべて少年の頬の
まだほんの少し温かい少年の頬の
笑窪に触れて我慢した
(この森にはアスタロテがいてね
夜になると迷いこんだ旅人や
村の子供を魔法にかけて寂しくさせるんだ)
少女は思い出していた
昨日のことも一昨日のことも
もっと前のことも
「お母さんの声が聞きたい
絵本を読んでほしい」
そう思ってしまった少女は
涙を流しながら微笑んでいた
目の前にいた少年は霧のように曖昧になり
消えていくそばで
少女はついに眠りについた
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低温の海を駆ける
魚雷たちの戯れのなかに
陸の少女は花を手向け
必要以上の涙を流した
死を見つめることでしか
己を人間と認められないなら
「それは悲しい」
そう思うことがまるで定められているような気がして
ふと嫌な気持ちになる
命のこたえを順繰りに追っても
あの少女の涙も
魚雷たちの終着点も変わらない
青いスペクトルにもならないこの命が
どこへ行こうとも
彼らの顔色が窺えないから
どこへでも行こうと
地球に縛られた私の相対に
彼らはずっと遠くへ歩いているのだろうか
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私、幸せよ
銃で頭を撃ち抜かれることのない
この平和な国に生まれて
あなたはよく少年兵の話をするね
可哀想だ、何かできることはないか
口癖のように話していたね
私、幸せよ
貧困や飢餓のない生活を送りながら
遠い国のスラブ街の話をするあなたに
相づちを打ちながら
今日の終わりを静かに待つの
私、とても好きよ
約束された命があれば
あなたもちゃんと幸せになれる?
「私、幸せよ」
あなたはまだ戦争の話をするのね
銃を持った少年兵が
あなただったらよかったのにね
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私は地球の手になって
粒子のひとつひとつを摘む
それは量子論にない
質量ゼロの物質なので
いつの間にか得ているけれど
いつの間にか消えちゃってる
今日、夕日のまわりに漂っていたのに
夜にはもう見えなくなった
とても勝手気ままなものなので
私にもよくはわからない
私は地球の身になって
それを感じようと試みた
恍惚も慟哭も同じように
質量ゼロの物質なので
少し触れた気がしただけ
なのにずっとここにあるような
不可思議な安心感を
私の心に置いていく
とても勝手気ままなものなので
そのまま置いてきぼりにして
私の手の届かない
うんと遠くへ去っていく
君の背を眺める星
こんなにも小さかったのか
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彼が呼吸を始めた日
宇宙は一瞬静かになった
虹色の波長の終端
何もない海の底で
彼は友達を持たず
家族を持たず
恋人も恩師も持たず
暗く冷たい海の底で生まれた
よく言えば「自由」であり
悪く言えば孤独であった
しかし感情を知らない彼に
そんなことは無意味なことで
もしこの海の底で
彼が感情を覚えたなら
それはあまりにも残酷で
とても耐えられるものではない
なら彼はなぜ生まれたの
生きるだけの生涯が
私には機械的に映るのです
分厚い氷の天蓋を
彼はまだ知らない
この光も
そのずっと向こうにいる私達も
彼はまだ知らないんだ
彼は呼吸を始めた
とても静かな時間の檻で
涙を流す彼に会えたら
笑い方を教えてあげよう、と
そう思う
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私の飼っていた雀が
朝焼けに恋焦がれて
小さな羽がひとつひとつ
煤になって町に降る
混雑した回線の外で
私は頼れる人を探す
この魂がこの魂だけが
救われるように願う
一次元の上を歩く人生だから
私は他人ぶって「私」を指せない
ああそうだ
私は罪悪のもとで鳥を殺した
こんな魂のためだけに
今朝
灰色の鳥が
空を落ち始めた
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遊星小夜曲は僕の脳をリベロ化して
辻褄の合わない異端論文をこれでもかと書かせるのだから
右隣の愛するものの存在すら認識できなくても仕方ない
隣町でコムメルシは人々を楽しませる
そんな日の夜の指揮者は
二分化した大衆の境界に休符も置けず
そんな日の夜の僕は
漠然と思う未来図に音調も持たせず
低空飛行するカラスに憧れ
空気を切り裂き殺しながら飛んだ
僕の脳がリベロ化して3分後
に