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さみだれの部屋  〜 新着順表示 〜


[772] カタコンベ
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とっ散らかした部屋で
生者は脆弱に
愛するための言葉を拾い食いする
おかしのパッケージを
眺める死者を
僕は馬鹿にしたくない
理解することをやめたら最後
とっ散らかした部屋は
愛せない食いカスだらけに

2014/02/23 (Sun)

[771] 群青体
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今見ているものが
今まで見てきたものが
すべて偽物でした
この空の青さを
確定する物質
群青体は確かにあった
あったというのに
虚構に生きる私の前には
私のみが持ちうる青しかない
これは偽物だ
私だけが信じる青ではいけない
それは粒子のスピンと同じで
絶対にはならない
私たちが共有するものは
偽物であり
群青とは呼べない

2014/02/18 (Tue)

[770] 魔女
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猫が死んだ
魔方陣の上で
無理やり夢を持たされて
希望を思うその双眸
どこを見ているのか
どこも見えてはいないのか
猫が死んだ
今ここに魔法がかかった
猫が死んだ
ただ恍惚と輝くばかりの双眸
鼓動などない

2014/02/12 (Wed)

[769] イデア
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イデアの手を引いて
言の葉の空を自由に飛ぶ
神話の中でしか生きられない
天使や悪魔に会えるだろう
世界を写す鏡
鏡を写すのは何
イデアの声を信じて
世界を写す目を

涙も凍り
言の葉は塞き止められて
沈んでいく体を受け止める手は
ここでは生きられない
あなたのものだった
今日を写す僕と
僕を写すあなたと
あなたを写す今日があれば
どこでだって生きていける

2014/02/07 (Fri)

[768] 不機嫌な天使
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羽根が一枚抜け落ちただけで
一日が台無しになってしまう天使
そんな日に私が死んだら
ふて腐れたように
でも出迎えてくれるのだろう
作り笑顔よりはずっといい
死んだばかりの私にはそのくらいがいいよ

2014/02/03 (Mon)

[767] ワールド・エンド
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そのしがない老婦人は
孫にあげるプレゼントを探し町を歩いていた
その目には子供のような無邪気さを覗かせ
湧き上がる高揚を堪えながらもしかし軽い足どりだった
それでも世界は終わる
風船のようにふわりふわりと

彼女は約束の時間を気にしていた
バーで落ち合う恋人に嫌われないように精一杯のお洒落をして
その手には初めて繋いだ恋人の手の温もりがあり
思い出せば自然と出てくる笑みを堪えながらも心は踊っていた
それでも世界は終わる
カクテルが夕日色に染まる明けにはもう

家族で出かける初めての旅行
父はガイドブックを一心に読んでいた
母は眠る我が子の手を握り窓の外を眺めている
太陽は穏やかに空を青く見せて
その空を狼は木陰から仰いだ
それでも世界は終わる
初々しくはしゃぐように

パーティーはつまらない
いつも仲間はずれだから
私はさみしんぼうのうさぎなのに
いっつも「部屋にいなさい」 って言われるの
それでも世界は終わる
私がゴロンと横になると
世界は色とりどりにくだけ散るの
ニュースの終わりのように
とても静かに

2014/01/30 (Thu)

[766] ペーパークラフト
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この命のために
草花を焼き払い
この命のために
鳥を射ぬった
この命のために
川を塞き止め
この命のために
海を減らした
なのにこの命は
てんで役に立たず
月に吠えることしかしない

この命のために
誰か一人は死んだ
この命のために
粒子は集まり
この命のために
意思をもった
それでもこの命は
生きる糧を見失うだけで
よろよろと力なく崩れていくんだ
この命は

2014/01/29 (Wed)

[765] 終日のノクターン
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いのちの頬を
伝う琴線が
いつまでもあなたを奏でている
息をするように
咲いた花をごらん
いつからかあなたを待っているようだ
それはこの世界の
あなたへの愛情
空が続いているのは
あなたが帰ってくると信じたから

夜の背中を
さする風が
いつでもあなたを優しくさせる
眠るように
潜ったクジラをごらん
いつかまたあなたに会えると信じているよ
それはこの世界の
精一杯の愛情
空が繋いでくれたから
あなたはどこへ行っても
きっと迷わない

2014/01/24 (Fri)

[764] 戦争を詠う平和
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「いつか戦争がなくなるといいですね」と語る
私たちの世界平和

ミサイルを飛ばせば
月に行けますか
クレーターの真ん中に家を建てて
犬をね飼うんです
あなたたちのように
何食わぬ顔で余生を送ります
そのまま月ごとよその銀河に移りたいのですが
構いませんよね
もしあなたたちが滅亡したくないと言うのでしたら
そのミサイルに花をびっしり詰めこんで
天の川の方へ放りなさい
私たちの世界平和は
戦争と共に捨てるべきだと
私は思うのです

2014/01/23 (Thu)

[763] エンゼルランプ
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何も持たない空は
青くなかっただろう
彼女が見上げていた
あの星も暗がりへ
私が歩く
あの階段もどこにもなく
だから思うのか
星になりたいと
彼女が見上げていた
あの星ほど明るく

何も持たない人は
生まれてはこないだろう
彼女が見つめていた
あの頃の手のひら
私は今も
あの手を離さず
だから思うのか
「死にたくない」と
彼女が見つめていた
あの手ほど温かく
優しくあろうと

2014/01/21 (Tue)
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