詩人:さみだれ | [投票][編集] |
一途な気持ちを笑わないでね
新緑の青を保つ水は
いつだってぼくを殺しかけて
こりゃもう年貢の納め時だと笑う気持ちを押さえてね
ようやく生まれた命を守る
長い長い努力の途中
新展開はるか遠くあなたが忘れる頃に
ぼくは好きだという気持ちを宣言する
そのころには世界はひとつになって
言葉や文化も変わるだろうけど
誓いの言葉は変わらずこの日本語にする予定
こんな妄想をあと何年何十年
もしぼくが不死身なら永遠に
抱えて生きていくんだろう
超展開はるか遠くあなたが死に行く頃に
ぼくはかならずその手をとって
ひとつになった心
異常なくらいの涙をためて
あなたの背丈を追い越した新緑の青が
太陽に照らされて光る
いつだってぼくを励ましている
頭おかしいくらいがあなたを愛するにはちょうどいいと
思えてきたんだろう
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受信できません
圏外かもしれません
壊れているのか
死んでいるのか
私はわかりません
いや、でも聞こえるよ
ブラックホールの向こうから
ちくりと胸を刺すような痛みが
確かにするから
いくら脳を積まれても
私にはただひとつの
あなたを見出だすことのできる
貴重な脳だから
受信できません
圏外なのはこちらでしょうか
壊れているのも
死んでいるのも
私にはわかりません
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いつか終わりが来るゲーム
恋の駆け引き
喧嘩の行方
冴えない脳でもわかったよ
あなたがいなくなったら終わりだと
絶え間なく続く盤上のキスは
一マス分下がって途切れる
永遠に同じ数字が出るわけではないから
僕は置いてきぼりをくらう
それでも終わりが来るゲーム
あなたが進んで
僕が進む
当たり前のようにあなたはいなくなって
僕は一人で進んでいく
絶え間なく続く一マスの連続は
あなたがいなくなったからじゃない
あなたがいなくなったら終わりだと
決めてかかった僕の弱さだ
いつか終わりが来るゲーム
恋しい気持ち
仲直りの言葉
冴えない脳でもわかったよ
あなたがいなくても続いていくこと
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大人になった僕の心
あなたの腕から巣立っていく
泣き止まない僕を抱えあげた
あなたの腕から巣立っていく
スーパーのお菓子売り場でいつも
100円まで好きなもの選んで
あなたの背中を追いかけて
かごにそっと入れておいた
大人になった僕のかごには
少し高いお菓子が入ってる
あなたの押していたカートが
どんどん遠く小さくなっていく
人のために生きることを
語らず僕に教えてくれた
あなたのために何ができるか
何でもできると答えよう
大人になった僕の心
あなたの腕から巣立っていく
泣き止まない僕を抱えあげた
あなたの腕から巣立っていく
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数万度の胸の熱さも
引かれあう僕らの関係も
全部あなたの形見だと思えたら
凍てつく胸を通り越した
重苦しい鉄球の明日
全部あなたの形見だと思えたら
この涙の一滴さえ
この耳で聞いた音でさえ
全部あなたの形見だと思えたら
ただ「さよなら」と言うだけでは
「ありがとう」と言うだけでは
全然足らないだろうから
あなたを思う今日を生きよう
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ああ
私のうたう愛は廃れちまって
廃れちまって淋しい
胸の内側のメッキが剥がれてる
剥き出しの原色が
あなたには何色に見えてるんだろう
道化のように踊ってる
素敵な運命線
僕が夢見た世界の輪郭
なぞるステップが
ちょっとずつずれて
あなたには合わせられない
俺のうたう心臓がため息をついて
背中を丸めてぽつぽつ泣く
目線の後ろの恋がだんだん離れてる
さっきまでずっと
あなたのそばにいたのに
私の剥がれたメッキをどうか
どうかあなたへ
用途不明の心をどうか
どうか
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満足できないわ
天国ではないから
断頭台のそばを過る
鳥だってきっと同じでしょう
汚れたりしないわ
意識は私のもの
連続回転有限粒子
見た目じゃなんのこっちゃわからないでしょ
ちっともこっちを見ないのね
勝ち戦ばかり求めちゃって
私の槍に貫かれるのがこわい?
なんて言わないでね
鋼の心なんてないの
革の服一枚で生きてるの
私は最後の魔王の城にすら
通してもらえないの?
私の名前をちゃんと呼んで
犬だってすっかり覚えてるのに
唯一無二の私の名前を
その頭に叩きつけてください
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あなたの声が
聞きたいと願うも
夜風は冷たく口を閉ざす
あなたの姿が
見たいと願うも
月はいたずらに笑うばかりで
悲しい夜の連鎖
反応のない分子
あなたの方を見ていたいのに
私の指先が
届けばと願うも
星は遠ざかり
この手は小さすぎた
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地雷原の真ん中に建てた
お父さんの自慢の家
私はここから友達を作る旅に出る
夏の日差しは背中を焼いて
見慣れたドクロマークにお辞儀
私だけ
私だけ
今ここで歩いているのは
ねぇママ
私、今
こんな風に生きてるんだよ
空に一筋ミサイル雲
飛べない小鳥の代わりに
私は手を上げて揉み消してあげる
夏の日差しは髪を焼いて
スイッチひとつでダメになる今日を
恨んで
恨んで
今ここで歯をくいしばってる
ねぇママ
私、今
こんな風に生きてるんだよ
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最後の日には
朝ごはん食べて
いってきます、と
虚空に告げて
誰もいない通り
口笛高く
歩き慣れた靴が
朝焼けに響き
彼女は嘆く
彼は嫌悪する
夜が冷たかったこと
終わりが来ること
何もかも全部茶番だったのか、
と