詩人:さみだれ | [投票][編集] |
あなたが風邪を引かないように
わたしは雲になって
あなたのいない
どこか海の上にでも行きます
あなたが転ばないように
わたしは石になって
あなたのいない
どこか山の奥にでも行きます
あなたが元気なときには
わたしは夜になって
あなたのいない
地球の裏側に隠れます
あなたが不安定なときには
わたしは涙となって
あなたのいない
どこか道の上に染みます
あなたが愛する人を愛するように
わたしはバラの刺となって
あなたのいない
どこか知らない片隅に身を置きます
あなたがわたしを思うとき
わたしは何となって
あなたのいる
あたたかい日だまりに入るのでしょうか
あなたに良いものでありますように
わたしは願いとなって
あなたのいない
神様のお膝元へ行きました
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これは君に会うまでの道だ
傍らに首を垂らして咲く季節の花を愛らしく思う
これは君に会うまでの時間だ
忘れた名が風に吹かれ海の方へ消えた
これこそが君に会うまでの不安だ
天地に谺する私たちの魂の
その澄んだ明るい声を
これが君に贈る詩だ!
星の不安定な輝き
座り込む泡の残渣
静謐な心の中に
歓喜の音を響かせる
広く世に
君の耳に
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わたしは悪い人です
物心ついたときから
世界の終わりを望んでいましたから
夕暮れが嫌いでした
なぜかは知りませんが
生まれてすぐに
与えられた名前は
期待ばかりで
重すぎて沈んでしまいます
錆色の帰路
それは世界の終わりにも等しい
長く孤独にさせられます
なるべく優しくしよう
そう思ってはいますが
薄暗い外套を
人は良く思わないのでしょう
ネイビーブルー
わたしは悪い人です
追放されるべきものです
ただ黄金色の帰路
その世界の中で
少し歩かせてください
あなたがまだ
明るさの中に
希望を仰ぐのなら
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すべての人々がひとつのものを信じたら
それは本当になるのかな
それが神様だったなら
神様は出てきてくれるかな
願いを叶えてもらいたい訳じゃない
ただその鼻っ面をへし折りたい
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瑞々しい木の葉の子
頬に未熟な接吻
音沙汰のない世界の境界
歩いていけたならいいのにね
母の胸に抱かれ
父の手をせがんだ
きみの尊さは生まれてすぐに
きみの高みは歩き出す頃に
心などと言うものは際限ないものだ
より深く知りなさい
見たままに愛さず
きみが信じたものを愛しなさい
梢に止まる鳥たちが
色んな話を聞かせてくれよう
冬の木枯らしへの準備だから
真摯に耳を傾けなさい
太陽がいついかなる時も
見守っていることを忘れずに
きみは長い長い旅を
安心して歩みなさい
世界の境界が賑やかになったら
迷わず歩いていくの
きみは強い子なんだから
誇りを持って生きなさい
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生きている素晴らしさを伝えるために
この人たちは詩を書いている
愛することの尊さを伝えるために
この人たちは詩を書いている
何でもない発見を
嬉々として詩に書き起こす
世界の理を
自分だけが知っているかのように
鼻高々に詩を書いている
悲しい過去を共有したい
それがこの人たちの趣味である詩
恋の明るさ
辛さ
孤独を
この人たちは詩と読んでいる
至高の存在を目指したり
神様になり代わり
詩を書いている
そんなくだらないことに
時間を費やすことができる
私たちは詩人でしょうね
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生まれてくる子供たちが
世界を変えようと足掻いている
これからたくさん呼吸をして
世界とひとつになる
その中で小さな
ほんの小さな変化を起こすの
幸せになろうと
考えてみるの
あらゆるものが
妨げに思えたり
あらゆるものが
悪いことのように思うよね
そしてそれを世界の理だと
いつか気づくんだよね
精一杯に輝こうとする
それも世界で
輝けずに煤けてしまう
それも世界だ
生まれてくる子供たちが
世界を変えようと笑いかける
純粋無垢な
まだ見えぬ目を輝かせて
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きみがクシャッと笑うのが
夕暮れの始まりに似ていて
山の合間に見える
星ひとつを大切にしました
きみが目を細めて
わたしを見ています
わたしはきみと初めて
目を閉じて キスをしました
わたしたちが歩くレールは
細く頼りないと人は言うけれど
互いに支え合い歩いていくことができるのですから
それほど素晴らしいものなどありません
きみの背に広がる世界のすべて
山や海や毎日の営み
わたしはその黄金色の風を前に
涙すら浮かぶのです
きみこそが夕暮れの始まりであり
夜の終わりなのです
わたしはきみの手をきちんと握りしめ
朝焼けまで
眠るきみを守ります
邪悪な者や
心を締め上げる夢から
眠るきみを守ります
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濁音の海
波が高く
スープの中に
昨日の私
歩き出した足は止まり
砂に捕まる
命の代償は何か
ふと考えるけれど
もういなくなったね
蝉も
トナカイも
私たちが感じる前に
夕べのこと
人が瞬いて
きれいだった
幻想的なショー
ずっと溺れていようね
曖昧な誤差が
私を遠ざける
あの海の先
曲線の彼方から
さようなら
ね
さようなら
「ずっと夢見ていてね」
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あなたが夜毎鳴くものですから
私はすっかり眠れなくなり
朝焼ける空にめまいを覚え
日を避けるようになりました
あなたは昼こそ大人しく
慎ましく淑やかに
しかし焼けた空が沈む頃には
誰にともなく喋り出すのです
あなたは空しさの檻をあてがわれ
味気のない乾パンをつつき
羽繕いで半日を稼ぐと
時の流れを急かしました
あなたの本心もまた
他のそれと同じに
外套を羽織り
見映えよく取り繕うのです