詩人:さみだれ | [投票][編集] |
大人は嘘つきだから嫌いだよ
いじめなんて大嫌い
恋人は浮気をするよ
子供たちはよくない遊びを覚えたよ
煙草のポイ捨てしないでよ
年寄りに優しくしてよ
ものに当たるのはよくない
暴力はもっとよくない
笑いましょうね
みなさんで
アハハハハハハハハハハハハハ
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君
如何にしてそれ魂と呼ぶ
絞り出した言葉
その幸先を願え
君
気取るには丁度よく
悟るには遠すぎて
選ぶには近すぎた
滞るがゆえの
安楽を解せ
君
心せわしく打ち続く
捕まえた言葉
その奇跡を歌え
君
暗雲を呪わず
舵をとれ
日を望む喜びに繋がろう
追わずして足は動かず
動かなければ解せない
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
死んだ赤子を抱いた女
浅黒く痩せ細った醜い女
墓を掘っている
その辺に転がっていた石
そいつを使って
宝物を探す子供そのもの
滑稽なものだ
少し離れたところでは
男が棺をこしらえている
それもまたひどく不格好な形(なり)
汗水垂らしてこしらえている
慈悲深いお前らときたら
せっせと枯れ枝やら老いた花やらを取ってきて
鼻高々に分けている
滑稽なものだ
やがて計算高い神様が
運を与えてやろうとやってくる
代わりにこの世で最も美しいものを寄越せという
女と男とお前らは世界中くまなく探した
あるものは海の底から黄金の山を
あるものは自身の体を
あるものはこの世界だと言い
あるものは子供を差し出した
滑稽なものだ
男と女は何も持ってはいなかった
仕方なく死んだ赤子の肉体を差し出した
しかし計算高い神様は
運を与えたと言ったきり
天へ帰った
お前らは何もかもを失い
何もいいことがなく死んでいく
それは死んだ赤子そのもの
お前らが"同情"したそれがお前らだ
滑稽なものだ
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近頃は晴れ間もなく
ひたひたと雨が歩み寄るばかりで
いやはや住みにくくなったものです
昔はこんなでもなかったんですよ
しかし近頃は酷いものですな
酷いといえば!
あなたご存じありませんか
町外れにふらりと現れては
若いおなごを捕まえて喰っちまうアイツですよ
何でもあの東の山にゃ
吊るされたおなごの肉がたんまりあるそうで
私も長年生きてきましたがね
これほど背筋が凍ったことはそうありゃしません
夜なんかになると
布団中でカタカタ歯震わせてんです
おかげでほらぁ見てください
目下にくっきり隈ができちまいまして
畑もまぁだ耕せておらんのです
酷いものですな
あんたんとこの下の子も気を付けないと
目離した隙にどこもおらんようになりますよ
いえ私は大丈夫
こんな五月蝿いの連れていきよったら
アイツぁたまらんでしょう
すぐにその辺に捨てちまうに決まってます
それこそ生きたまんま木に吊るしちまうかもしれん
早いとこ捕まえてくれんものかね
いやはや長いこと引き留めたようで
それでは失礼
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ここに不快であることを記す
それはお前たちであり
私でもある
キチガイじみたお前たちは
よい医者のいる精神病院や
満足のいく薬を求める
それが不快の原因である
キチガイじみたお前たちは
人を殺すことに夢中になっている
自分にはそれだけの勇気が備わっていると信じている
それが不快の原因である
キチガイじみたお前たちは
狂人を愛しては
その本心に嘔吐し捨てている
それもまた不快の原因である
お前たちは人格を選り分けて
丁寧にチェストの上に置いている
それぞれに名前をつけ
要らぬ夢を見させている
私は不快に思う
怪物たちが町の至るところで
高らかに歌う様を
細胞が自信をもって
隣人を諭す様を
太陽があっけらかんと
呆けている様を
私は不快に思う
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俺は溜め息をひとつ
お前は欠伸を
会話なんてない
必要ないさ
雲がちぎれる
片方に嫌気がさしたのだろう
きっとそんなところだろう
隣のベンチでは
同僚を殺している男
滑り台の上では
同級生をレイプした小学生
向こうに見えるビルには
部長との不倫に溺れる女
バス停に佇むのは
今から死にに行く奴
はたして俺は何者だろうか
血塗られたカミソリをもって
同じく血塗られた性器をもって
狂ったような目をしている
愛憎に狂ったような目をしている
お前は何も言わず
俺もまた何も言わず
周りの目はこんなに冷ややかに
俺たちの虜に
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万華鏡の中で息絶えた
移り気な私の心などは
歴史とは呼ばない
独白に満足しては
誰かに聞かせてやろうとしては
物静かだったことに気付き
夢〃にさすらうも
気持ちが晴れることはない
写真立てなど持たずとも
鏡などなくとも
私は自分の姿を忘れはしない
それいかに醜悪であろうと
死ぬ術がないのだ
生き続けるしかあるまい
ひぐらしの泣きじゃくるのを聞いて
早く夏が終わればと思う
私の鬱憤とした気持ちも
どこかしら楽しげになること
あってほしいが
つまらないものはつまらないと
言えないお前たちがいけない
卑猥なお前たちのことだ
きっと何も言うまい
それ狸の皮算用
地球儀などいくら回したところで
話すことはおろか
キスすることもできまい
くたびれたベッドにすがりつくのは
私の不純ゆえか
この心臓の奥深く
しかと杭を打ち込んでくれ
手足を縛り磔
言葉も残せぬほど
思い切り
そうしていつかまた
キリストがごとく息を吹き返したなら
私の口を縫え
鼻を詰め物をし
再び杭を打て
私が生き返る度毎に
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ピストルがあってね
殺したいやつがいるんだ
腹のそこが煮えくり返り
いよいよ激情に乗っ取られる
通りすぎるついで
こめかみを
パンッ
電池を抜かれた時計さながら
死んでいくこと
きっと楽なもんさ
肌白く顔立ちの整った少女
物言うついでに捕まえては
優しくしている
密閉された瓶の中
飯ならたんまりあるさ
そのうちに慣れて
どんなものでも良く思える
俺のことも想うんだ
腹の足しになればと
捨て猫を見つけては
その首を絞めて埋めている
幸せをランダムで決められるくらいなら
いっそ死んでいた方がいい
感性とは良くいったもので
それは秤の重りのようなもの
量られているのは生き様で
主を知るものはいない
よくできたバランス
上手につれたはずでも
一方は徐々に沈みつつある
完璧な死に様を選びとうございます
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私は変わってしまった
今の自分なんて嫌いだよ
こんな詩しか書けなくなった
今の自分なんて嫌いだよ
僕はね、さみだれだったんだよ
雨なんて大嫌いなんだよ
俺はね、変わったんだよ
もっともなりたくなかった方に
変わってしまったんだよ
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夕日が燃え尽きる
橋から落ちる涙
夕日に映えたのも
一緒に沈んだのも
全部
僕が見た幻想で
まだまだそこにいるのに
全部
光に溶けて
触れられなくなる
"さようなら"
君が言う
"また明日"
飲み込んで
その背を追うには
僕の目は不自由すぎた
夕日がわざとらしく
橋から投げ込む希望
夕日に会おうにも
眩しくて触れられない