詩人:さみだれ | [投票][編集] |
忘れたこと
忘れてはならないこと
忘れてしまったこと
忘れること
覚えていることは
髪の毛を伝って
地面に落ちて染みる
忘れられることは
睫毛に光の粒を
光が見えなくなる
覚えていたことは
窓から飛び降りて
二度と帰っては来なかった
忘れないことは
息の生暖かさや
それを送るものの尊さと同じ
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曇りガラスを見ている
その向こうにある庭の花を
かまいたちが荒らしてしまわないように
彼女は祈りを呟いた
たったひとつの友達が
翌朝には散り散りになって
彼女はひとり窓辺のテーブル
紅茶の香りを楽しむ
気まぐれな心の中では
コーヒーが香る
苦いのは嫌いだというのに
眠れなくなってしまうのに
ため息をふたつ、みっつ
曇りガラスを真っ白にして
人差し指で書いた
自分の名前も歪になって
手のひらで拭った
窓の外に広がる世界を
つまらなさそうに眺めている
彼女はずっとつまらなさそうに眺めている
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君はいつも自分のことばかり
そりゃそうだよね
君の心には君しかいないんだから
という意味では君も孤独なんだよ
それを胸張って言うのも
うつむいて隠すのも滑稽だな
だいたいいつもそんな感じでお昼のメニュー決めてるんだろ
さみしいやつだ
また
また話してる
君が君と話してる
好きだとか嫌いだとか
どっちでもいいから
君以外のことほったらかしてる
気づいてないんだ
気づかないほど自分が好きなんだな
君が恋と呼んでるものは
君の心にしかない
残念ながら誰もいないよ
君がそこにいる限りは
全部まやかしだ
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死んでいる
ただそこに横たわって
それから亡霊がやってきて
美しい亡霊で
そしてやっと死に終えた
笑う
私は満足している
肺に溜まったタールも
気が狂いそうになる胃液も
気にしなくていい
私が求めるものが
迎えに来たのだから
安心する
時勢はわからない
誰がいたのか
何があったのか
そんなことはどうでもいい
なくして綺麗になった体
美しい亡霊
過去も未来もいらない
私はずっと死んでいたい
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君のほっぺが落ちる
憎たらしいフレンチトースト
三枚目がフライパンで歌ってる
それはそうと
さっきの夕暮れが嘘のように
月が空に張りついてる
ああそのまま
そのままずっとこうしていられたら
君の幸せを一緒に噛み締めていられる
君が寝言を言う
憎たらしい掛け布団
つぶれるたびに嬉しそうに
ああ今より
今よりずっといいことがあるなら
君のさみしさを抱いていられる
そのままずっとこうしていられたら
君の幸せと一つになれる
それが僕の幸せ
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誰も君のこと気にしちゃいないよ
君のこと暴こうなんて思っちゃいないよ
そこいらの石ころを踏んだり避けたり
蹴ったりしたこと
忘れたように
どれほど喚こうとも聞こえやしないよ
君の部屋は防音で
まして入り口も開口部もない
出てくることすらできないよ
だから君は生まれてすらいない
死んですらいない
中途半端な丈
似合わない筆舌
決壊した理論
生も死も忘れた物
ただそこにいて
いることを誰も知らなくて
つまり存在できていない
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少しだけ勇気を出して
窓を開けてみた
変わらないようで
やっぱり変わっている
君はどう見てるんだろう
わからなくて悩んでる
冷めてしまった僕の心を
どうかあたためて
たくさんの夢を見たよ
その中には嫌な夢もあったよ
どうでもいいものはもう
忘れてしまったよ
夢で君に会ったとき
何にも言えなかったことが
今になって苦しい
それでも君が笑うなら
窓をずっと開けて
冷めてしまった心たちを
卵のように抱いて
どうかあたためて
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ベーコンをカリカリになるまで焼いてね
たまごは半熟がいいな
コーヒーは砂糖三つね
パンは…ないの?
行き交う楽隊
ソプラノだろうか
それにしても隣のビル
高すぎやしないか
まだまだ眠り足りないよ
テレビつけないで
でも占いだけは見たいな
時間が来たら起こしてくれ
誰が閉めたカーテンだろう
開けなくちゃ始まらない
太陽はそばで怒ってる
もう遅刻だぞ!って
ああそういやそうだっけ
そんな気もする
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過去 現在 未来
道草食って 夢
どうせならもう
そこに居すわって
何食わぬ顔であなた方を見送ろう
(羊の毛皮をもって、佇むスーツ姿
"今しがた刈ったばかりなんだ"
ムササビのように広げて見せる
俺のはガラスの
どこにでもあるようなガラスの靴)
朝 昼 夜
寄り道ついでに 夕方
どうせならもう
そこに寝ころんで
花の蜜を吸いながら
あなた方の羽を眺めよう
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自転車で坂を上る
重たい足枷にも
風が吹けば嘘のように
見つけてもらえず
神社の裏で待ってる
神様
どうか彼を思い出して
時計なんて飾りだ
気にしちゃいけない
それでも誰かが君を呼んでる
帰りなよ!って
のびた影を二つ
くっつけて遊ぶ
神様のにやけた顔が
雲に浮かぶ
それにも気づかないで
僕らは帰っている
穂の揺れる音と
カラスの輪唱
バイバイ
それが始まり