詩人:さみだれ | [投票][編集] |
あなたは夕暮れにも
月明かりにも似ています
どこであろうとよく映えて
よく笑い苦しんでいます
あなたは天使ではなく
だからこそ素晴らしい心を持っているのです
どうかそのまま変わらずに
忘れずにいてください
そう願ってはいても
あなたは形を変え、忘れていかれます
気づいていたでしょうか
星があなたの頬を染めていたこと
あなたが幸せに微笑んでいたこと
あなたのいない世界が
誰かにとっては死ぬほど寂しいものだと
私はついにあなたを見失いました
それは必然だったのでしょう
あなたの声は懐かしさの彼方へ
あなたの温もりは夢を離れ
あなたの純情な言葉も
日常という部屋の中から旅立ったのでした
それは調律を忘れたピアノのように歪なものなのです
やがて年を経るごとに
あなたは幼くなっていき
やがて私が死ぬ頃には
まだ存在すらないものになり
あなたはいなくなるのでしょう
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いつからそこにあったのだろう
帰れない息苦しさとか
これからの夜のこととか
なんで月は教えてくれなかったのだろう
知らない地名のナンバー
色とりどりのボディ
止まらないことが退屈なんて
思ってもみなかった
ここから見える空は一体
どうやって俺に見せているのだろう
雲が綿菓子みたいで
なのにこの重たい苦い気持ちに押し潰されそう
俺のナンバーはどこへやら
雲みたいなボディは染まらない
こんな夕暮れの赤い
赤い赤い町だっていうのに
帰れない息苦しさとか
これからの朝のこととか
なんで太陽は教えてくれなかったのだろう
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忘れたこと
忘れてはならないこと
忘れてしまったこと
忘れること
覚えていることは
髪の毛を伝って
地面に落ちて染みる
忘れられることは
睫毛に光の粒を
光が見えなくなる
覚えていたことは
窓から飛び降りて
二度と帰っては来なかった
忘れないことは
息の生暖かさや
それを送るものの尊さと同じ
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曇りガラスを見ている
その向こうにある庭の花を
かまいたちが荒らしてしまわないように
彼女は祈りを呟いた
たったひとつの友達が
翌朝には散り散りになって
彼女はひとり窓辺のテーブル
紅茶の香りを楽しむ
気まぐれな心の中では
コーヒーが香る
苦いのは嫌いだというのに
眠れなくなってしまうのに
ため息をふたつ、みっつ
曇りガラスを真っ白にして
人差し指で書いた
自分の名前も歪になって
手のひらで拭った
窓の外に広がる世界を
つまらなさそうに眺めている
彼女はずっとつまらなさそうに眺めている
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君はいつも自分のことばかり
そりゃそうだよね
君の心には君しかいないんだから
という意味では君も孤独なんだよ
それを胸張って言うのも
うつむいて隠すのも滑稽だな
だいたいいつもそんな感じでお昼のメニュー決めてるんだろ
さみしいやつだ
また
また話してる
君が君と話してる
好きだとか嫌いだとか
どっちでもいいから
君以外のことほったらかしてる
気づいてないんだ
気づかないほど自分が好きなんだな
君が恋と呼んでるものは
君の心にしかない
残念ながら誰もいないよ
君がそこにいる限りは
全部まやかしだ
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死んでいる
ただそこに横たわって
それから亡霊がやってきて
美しい亡霊で
そしてやっと死に終えた
笑う
私は満足している
肺に溜まったタールも
気が狂いそうになる胃液も
気にしなくていい
私が求めるものが
迎えに来たのだから
安心する
時勢はわからない
誰がいたのか
何があったのか
そんなことはどうでもいい
なくして綺麗になった体
美しい亡霊
過去も未来もいらない
私はずっと死んでいたい
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君のほっぺが落ちる
憎たらしいフレンチトースト
三枚目がフライパンで歌ってる
それはそうと
さっきの夕暮れが嘘のように
月が空に張りついてる
ああそのまま
そのままずっとこうしていられたら
君の幸せを一緒に噛み締めていられる
君が寝言を言う
憎たらしい掛け布団
つぶれるたびに嬉しそうに
ああ今より
今よりずっといいことがあるなら
君のさみしさを抱いていられる
そのままずっとこうしていられたら
君の幸せと一つになれる
それが僕の幸せ
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誰も君のこと気にしちゃいないよ
君のこと暴こうなんて思っちゃいないよ
そこいらの石ころを踏んだり避けたり
蹴ったりしたこと
忘れたように
どれほど喚こうとも聞こえやしないよ
君の部屋は防音で
まして入り口も開口部もない
出てくることすらできないよ
だから君は生まれてすらいない
死んですらいない
中途半端な丈
似合わない筆舌
決壊した理論
生も死も忘れた物
ただそこにいて
いることを誰も知らなくて
つまり存在できていない
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少しだけ勇気を出して
窓を開けてみた
変わらないようで
やっぱり変わっている
君はどう見てるんだろう
わからなくて悩んでる
冷めてしまった僕の心を
どうかあたためて
たくさんの夢を見たよ
その中には嫌な夢もあったよ
どうでもいいものはもう
忘れてしまったよ
夢で君に会ったとき
何にも言えなかったことが
今になって苦しい
それでも君が笑うなら
窓をずっと開けて
冷めてしまった心たちを
卵のように抱いて
どうかあたためて
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ベーコンをカリカリになるまで焼いてね
たまごは半熟がいいな
コーヒーは砂糖三つね
パンは…ないの?
行き交う楽隊
ソプラノだろうか
それにしても隣のビル
高すぎやしないか
まだまだ眠り足りないよ
テレビつけないで
でも占いだけは見たいな
時間が来たら起こしてくれ
誰が閉めたカーテンだろう
開けなくちゃ始まらない
太陽はそばで怒ってる
もう遅刻だぞ!って
ああそういやそうだっけ
そんな気もする