詩人:さみだれ | [投票][編集] |
時計が動かない
誰のせいでもない
電池を抜けば
がらくたになると
わかっていたのに
彼はいじった
戻らないことも
進まないことも
しなくてすむと
わかっていたのに
ただ在るだけのもの
当たり前のこと
彼は拒んだ
まるで蚊を払うように
地球が回らない
誰のせいでもない
年をとりすぎた
ただそれだけのこと
わかっていたのに
彼は泣いていた
太陽が二度と
部屋の中に
射し込まないこと
わかっていたのに
ただ気にしなかったもの
当たり前のこと
彼は触った
まるでアルバムに触れるように
瞑った目を
開きもせずに
暗いと泣きわめいた
時間もない
わかっていたのに
彼はいじった
まるではじめからそうだったように
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
青白い星の夜
彼女は静かに眠っていた
その傍に寄り添って
僕は彼女を見つめていた
世界が止まったように
音は身を潜めて
彼女の言葉だけが
僕の耳に響いた
すべてが始まる瞬間を
すべてが終わる瞬間を
永遠にある時間ですら
彼女は作り出した
青白い星の夜
彼女は静かに眠っていた
さらさらした黒髪も
白い肌も夜に染まっていた
未来が生まれたように
彼女は目を覚まして
その言葉と心が
僕の心に溶け込んだ
すべてが青白い星の夜に
すべてがその手の温もりに
一瞬である時間ですら
僕は信じた
彼女を信じた
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
いつまでこんなさみしい思いをしていればいい
ただ君の言葉が聞きたいだけなんだ
君と話がしたいだけなんだ
君の存在を抱き締めたいだけなんだ
君のそばにいたいだけなんだ
神様に言われたからじゃない
誰に言われたとかじゃない
約束したからじゃない
あの約束をする前から
君のことが好きだった
忘れるなんてできやしない
ただ永遠に会えないのだけは嫌だ
あと何年
何十年待てばいいんだ
くらくらするような朝日も
眠れない夜も
あの時間も
ずっと一緒にいた
本当はいないのに
いつだって頭の中に君はいて
目は君を探している
本当はここにいたんだよって
出てきてくれよ
今までの寂しさを忘れるくらい
安心させてくれよ
ずっと一緒にいようって
言わせてくれよ
六年目の春に
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
愛することは
海の魚が跳ねること
空にキスしようとして
届かなくて深海へ
そんな君たちを
アンドロメダまで放りあげよう
呼吸の仕方が変わってくるけど
君たちなら心配ないだろう
愛してる
ああ、そんな言葉
易々と使わないでくれ
腐ってみっともない姿になるぞ
愛するということは
特別だということ
とっておきの切り札は
いつだって隠し持ってるもの
大事な言葉は
たった一度きりのもの
それが魔法でも約束でも
君たちが愛した空は
君たちを受け入れるだろう
じゃなきゃこの詩は
何の意味ももたなくなるよ
君たちのキスも
無意味なものになってしまうよ
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
このくらいの望遠鏡で
どれだけ多くの優しさが見える?
ちっぽけなものだって
笑ってるのは愚かな人なの?
ほんの一ミリずらしただけで
見る世界は大きく変わる
目新しいものがないんだって
飽きてしまうのは自殺志願なの?
あの輝きの表面を
撫でられる人でありたい
どれだけ冷たくされたとしても
触れ続けていたい
(アルファもベータも宇宙人も
元素、分子、超新星も
白色わい星も超巨星も
黄道もハップルもバルジも)
このくらいの望遠鏡で
優しさすべてが見られたら
あの輝きの表面を
撫でられる人になりたい
どれだけ熱くぶつかろうとも
触れ続ける
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
空も歩けるような
浮いた気持ちで
君に会えたなら
雲も摘まめるような
勇気が残ってて
僕は言うだろう
あと半分もしないうちに
一日が終わるから
あと半分はふざけて
はしゃぎまくろう
どんよりした部屋で
愛を語り合うより
真っ青な空を
君と歩きたいな
黄昏に背を向けて
愛を確かめあうより
真っ白な月と
君を考えたいな
あと半分もしないうちに
一日が終わるから
あと半分は手を繋いで
素直になろう
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
ここは詩人の部屋?
行き場のない憂鬱の捌け口?
ラブレターを入れた下駄箱?
哲学書?
枕元の日記?
森からの帰り道?
ライブコンサート?
宇宙人の筆跡?
人工知能の暴走?
校長先生のお話?
もしかして全部、詩?
詩でない詩なんてない?
何を書いても詩と読んでいい?
パクんなきゃ大丈夫?
ここは詩人の部屋?
部屋、間違えてないよね?
じゃなきゃ書いてていいよね?
真面目に書いてていいよね?
もしかして詩嫌いなの?
ヤンキーなの?
コンビニの前にたまらないで?
とにかく詩人の部屋に違いないよね?
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
太陽が出ないようなら
花はなんと言って泣くでしょう
鳥は木から飛び立てず
うつむくようになるでしょう
大人たちは酒を食らって
子供たちは眠り続け
やがてすべての生命が
目覚めることなく夢を見るでしょう
月がどれだけ太陽を真似ても
星がどれだけ青空を真似ても
それは夜に違いないのです
そのうちひっそりと
誰かが目を覚まし
静謐なことを嘆くあまり
歌を歌うのでしょう
そのうちひっそりと
誰かが目を覚まし
聞こえてくる歌声に
涙を流すのでしょう
これは長い長い夜の話
空が白む頃には忘れ去られる話なのです
詩人:さみだれ | [投票][編集] |
海の上を歩きながら
風は僕の背に吹きつけた
Yシャツが帆を張って
僕の歩みを急かした
この温もりが陽でないなら
人なのだろうか
この温もりが桜であるなら
優しい匂いだ
今ならなんとなく
泳げる気がする