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さみだれの部屋


[506] 異次元空間殺人事件
詩人:さみだれ [投票][得票][編集]

私は言う
これが本能なのかしら、と
鏡の前の鏡の中の鏡の自分が
まるで生きている
今に出てきそうなくらい
その息や髪の揺れ
瞳孔、首筋
話してみるとね
すごく優しい
すごく偽善的なの

私はいつ
眠りについただろう
壁の前の壁の向こうで壁の染みが
まるで生きている
蛇のようにとぐろを巻いて
バターのように溶けていく
その時間には
孤独にビクッとする
今まで何時間こうしていただろう
これじゃまるで死んでいる
死んでいるじゃない!

"あなたは一人じゃない"
私はこんなに苦しい時間
悪魔に連れ去られて
ひとり小屋に入れられて
光もなく
音もなく
体温さえわからない
"手をとってくれ"
それは壁から伸びてくるの?
"あなたは素晴らしい"
誰もいない誰のためにもならない
この時間から逃れられない私は
まるで死んでいる
いつか何かに殺されている

2012/06/18 (Mon)

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