私は海を見下ろし失った心の奥をチリン、と鳴らすのです海面を縫うように光が揺れたり魚がはねる度に波紋が遠い国まで誰かを運んでいるのだろうそういう背の高い広い気持ちが音を出しているのですまた空では雲がもつれ合い太陽を怒らせていますしかし私はその一幕にすら音を聞いている気がするのです私たちが作り上げた概念がなんの意味も持たないのが時の流れと言うものでしょう今吹く風が声をかけてくれるそんな心の音を私たちも奏でましょうね
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